scene210 ページ10
そのとき、野坂がはっとする。
「もしかして、向こうの世界から持ってきたものなのか……？」
その言葉を聞いて、おれもはっとした。
「もう一つの世界では、エイリア石が支配している……とか」
「ま、まさか……」
おれと野坂は顔を見合わせる。少しの間、沈黙が支配する。
あの石が、向こうの世界にしか存在しないものだとしたら。
おれは今更、事の重大さに気付く。こっちの世界には、本来存在しないものをAが持ち込んだんだとしたら。
それが他人に知られたら、大変なことになる。
ガチャンとロッカーが閉まる音で、おれは我に返る。
「……そろそろ行こうか」
野坂は神妙な面持ちで口にする。
「そう……だな」
「なんとかして見つけよう。……既に人の手に渡っていないといいんだけど」
更衣室を出る前に、野坂がそう口にした。
練習の間、その言葉がおれの中にずっと渦巻いていた。
・
それから、おれと野坂、不動さんの三人は、エイリア石を探して、あらゆる場所を巡った。
合宿所内はくまなく探したし、チームメイトの部屋も捜索した。無断で入ったことに関しては、おれも心が痛い。
合宿所の周辺も歩き回った。雷門中にも夜中に潜入した。だけど、やっぱり見つからない。
不動さんとも情報交換をしていた。でも、不動さんも見つけられていないようだった。
「マジで、どこいったんだよ……」
その日は、野坂と遊園地を探索した帰りだった。おれが以前、Aと訪れた遊園地だ。
バスに揺られながらまどろむ。一日中歩き回ってくたくたになったおれは、睡魔に襲われていた。
「まだ、行っていない場所はあったかな」
隣に座る野坂が言う。こいつ、まだ探す気なのか。おれはもう諦めかけていた。
「もう見つかんねえよ。あんなちっこい石、探すとか無理ゲーだろ……」
疲労と眠気が相まって投げやりになるおれに、野坂が渋い顔をする。
「諦めるなんて、ヒロトくんらしくもない」
「うっせー。このまま、一生出てこなけりゃいいじゃねえか。あんな石、なくなっちまえばいいんだよ」
おれがぼやくと、野坂はため息をついた。窓の外の景色を眺めながら、まだなにか考えているようだ。
「なくなったからって、なかったことにはならないんだよ」
バスの揺れが心地いい。だんだん遠くなる意識の中、野坂の声がぼんやりと聞こえてくる。
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鈴松信@誤字り姫@しんしん[受験により低浮上](プロフ) - コメント失礼します!面白くて一気読みしちゃいました!向こうの世界からオリオンの世界にエイリア石で来る…っていう考えが私の作品と似ていて凄く興味を惹かれました!更新無理せずにファイトです! (2019年6月11日 17時) (
レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年6月2日 1時
