scene248 ページ48
もし、Aと顔を合わせたら、今までみたいに話せるだろうか。
「Aちゃんとは、もう会いたくない？」
野坂の言葉が降ってくる。
わからなかった。落ち着くまで、距離を置いた方がいいのか？ 会えるうちに、会わなきゃいけないって、思っていたはずなのに。
そうじゃないと、後悔することになる。
「ぼくがするべきことはね、ぼくの好きなようにするってことだよ」
おれは口を半開きにしたまま野坂の顔を見た。
「ちゃんとぶつかって、ぼくはそうやって知っていきたいんだ。ぶつかり合うことって、素晴らしいことだと思わない？ 最初から興味がなければ、すれ違って、相手に失望することもないんだから」
光のない二つの目が、おれを映した。
「自分の目で確かめないと」
おれは釘付けられたように、野坂の目を見返す。
「ヒロトくんの目の前にいるAちゃんが、本当のAちゃんだ」
色のない瞳に、光が灯る。
おれを惑わす、いくつものこと。その全部、おれが目にしたものじゃない。人から聞いたこととか、思い込みとか、おれの迷いは、自分の中で生まれたものだ。
本当はそんなもの、どこにも存在しない。
そんなものに惑わされてちゃいけない。信じるのは、自分で見たものだけ。真実は、おれ自身で掴み取るものだ。
おれの瞳の、そのずっと奥を見つめる目が、そう語りかける。
野坂がふっと微笑むと、おれはようやく目を逸らした。足元の草が、なぜだかぼやけている。
「……お前、許せないとか言ってたじゃねえか」
「そうだね。ぼくもあれから、いろいろ考えたんだよ」
野坂が言う。おれは自分の両肩をぎゅっと掴む。
同じ時間をかけて、野坂はその答えに辿り着いたのに、どうしておれはいつまでもくよくよしたままなんだろう。
「またいじけモード？」
野坂が顔を覗き込む。
「うるせえ。こっち見んな、馬鹿」
肩をぶたれても、野坂は眉一つ動かさない。
「ぶうたれてても、別にかわいくないよ？」
「かわいいと思ってやってねえんだよ！」
「あはは、よかった、少しはいつもの調子が戻ったみたいだ」
そう言われて、どきりとする。
……こいつは本当に、なに考えてんのかわかんねえな。気遣ってんのか、ただ単に思ったことを口にしてるだけなのか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鈴松信@誤字り姫@しんしん[受験により低浮上](プロフ) - コメント失礼します!面白くて一気読みしちゃいました!向こうの世界からオリオンの世界にエイリア石で来る…っていう考えが私の作品と似ていて凄く興味を惹かれました!更新無理せずにファイトです! (2019年6月11日 17時) (
レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2019年6月2日 1時
