scene240 ページ40
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バルコニーの手すりに寄りかかり、ぼーっと空を見上げる。
今日も降ってきそうな星空が広がる。こうして風にあたっていると、少し頭がすっきりしてきた。
湖の方から吹く風は湿気を帯びていて、ひんやりと冷たい。
消灯時間はとっくに過ぎている。でも、おれは眠る気になれなかった。
自然とため息がこぼれる。頭の中には次々と疑問が浮かぶ。
なんで記憶が戻ったことを隠す必要があったんだろう。
やっぱり、隠したいことがあるんだろうか。
飛び降りた理由も思い出したのか。
考えてもわかる訳がない、Aに直接聞いてみないことには。それでも、同じような問いが頭の中をぐるぐると巡る。
野坂が言っていた、受け止めなければならないということ。
ずっと嘘をつかれていたということに多少ショックを受けたものの、おれはそれさえも受け止めるつもりだった。
Aにもなにか理由があるはずだし。どんな理由だったとしても、Aを見捨てることなんてできない。
Aはまだ、苦しみの中にいるんだ。
真実を墓から掘り起こすと決めた。知っていたら止められたこと。同じことを繰り返さない為にも。おれたちは、知る必要がある。
だから、このまま放っておいていい訳がない。
野坂は少し腹を立てているようだし、その気持ちもわからなくない。野坂は頭がいいからこそ、考えることも多いのだろう。
おれはポケットからスマホを取り出した。
緑色のアイコンをタップし、メッセージを打ち込む。
『おれはどんなお前だって受け入れる。ひとりで抱えようとするな』
Aに宛ててメッセージを送信して、スマホを無造作にポケットに突っ込む。
仰ぎ見ると、無数の星の中にぽつりと浮かぶ月が目に入る。
……今もAは独りぼっちなんだろうか。知らない世界で、知ってる顔に囲まれて、独りぼっち。
ひょっとすると、Aは誰のことも信用していないんじゃないか。
野坂のことも、おれのことだって。
Aが思い出したことはたぶん、Aにとっても受け入れがたいことだったのかもしれない。
だったら尚更話して欲しい。突拍子のないことでも、笑ったりしないのに。
振り回されるのだって、今更だろ。
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鈴松信@誤字り姫@しんしん[受験により低浮上](プロフ) - コメント失礼します!面白くて一気読みしちゃいました!向こうの世界からオリオンの世界にエイリア石で来る…っていう考えが私の作品と似ていて凄く興味を惹かれました!更新無理せずにファイトです! (2019年6月11日 17時) (
レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年6月2日 1時
