scene236 ページ36
お互いに黙ると、急に路地の静けさが沁みる。おれはなにか話題を探していた。
「そういえばこの間、お前と行った遊園地に、野坂と行ったんだよ」
ぱっと思いついたのが野坂の無表情だった。なんだか腹立つ。
「二人で？」
Aは不思議そうに首を傾げる。
「ああ。ただ、遊びに行ったんじゃなくて、探し物に行ったんだけどな」
「探し物って……あ、この前言ってた。なんだっけ？」
「ちっこい石な。結局見つからなかったんだけど」
「遊園地で落としたの？」
「いや、遊園地じゃねえっつーか、落としたんじゃねえと思うんだけどな……」
Aは増々不思議そうな顔をする。
「まあ……いろいろあってだな」
「それって、やっぱり大事なものなの？」
「じゃなきゃこんなに探さねえよ」
「そっか……誰かからの貰い物？」
訊かれて、おれは返答に困る。でも、Aの大きな瞳が顔を覗き込んでくるから、正直に答えざるを得なくなる。
「……お前がくれたんだよ」
「え、私もヒロトにプレゼントしてたんだ」
Aは大きな目をもっと丸くする。
「プレゼントっていうか……まあ……な」
「なんか貰ってばっかで悪いなって思ってたから、よかった」
「いや、そこかよ」
「でも、失くすなんてひどいなぁ……ヒロトらしいといえば、らしいのかもしれないけど」
頬を膨らませるAに、おれも突っ掛かる。
「お、お前だって、おれがあげたネックレス失くしただろ。どっちもどっちだ」
「え、あ、そ……そうだったね。それは本当に……ごめん」
肩を落としてしゅんとするAに、おれは思わず吹き出す。
なんか、お互い大事なものを失くす習性があんのかな。そんなとこ似てなくていいんだけど。
「どこ行ったんだろうね……、三日月のネックレス」
「さあな。案外、部屋の中から出てきたり――」
無意識に足が止まった。
なにかがおかしい気がする。今の会話。なんでだろう。
Aが振り返る。小さく口が動いて、なにか言っているようだ。
おれは違和感の元を探って、手繰り寄せて、喉の奥から引っ張り出す。
「……おれ、三日月って言ったっけ……？」
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鈴松信@誤字り姫@しんしん[受験により低浮上](プロフ) - コメント失礼します!面白くて一気読みしちゃいました!向こうの世界からオリオンの世界にエイリア石で来る…っていう考えが私の作品と似ていて凄く興味を惹かれました!更新無理せずにファイトです! (2019年6月11日 17時) (
レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年6月2日 1時
