scene234 ページ34
そんなおれを見て、Aは表情を緩ませる。
「行こっか」
少し久しぶりに会うということで、おれは多少緊張していた。でもそんな心をAの柔らかい微笑みが解いていった。
・
大きな通りから一本裏の道に入るだけで、一気に人通りがなくなった。民家に混じって、奇抜な服屋だったり、なにを売ってるのかよくわからない店だったりが並ぶ。
途中、ベビーカーを押した女性とすれ違う。
Aの行きつけだと言うカフェは、更に狭い道に入ったところにあった。
突き当りに構える、青々とした蔦に覆われた石造りの建物。内装は白を基調としたヨーロッパビンテージ調で、中庭に向けて大きく造られた窓から差す日が店内を明るく照らす。
「あんまり時間取れなくてごめんね」
席に案内されるなり、Aは申し訳なさそうに眉をひそめる。
「構わねえよ。こっちこそ、急に悪いな」
そもそも無理言ってるのはこっちなんだし。
ウエイターが来て、Aはアイスコーヒーを、おれはカフェラテをオーダーする。
Aがコーヒーっていうのも意外だった。てっきりココアとかかと思った。
「ここのケーキ、おいしいんだよ」
Aはメニューに並んだ写真を見て言った。
「頼まなくていいのか？」
「うん……今はダイエット中だから」
残念そうにメニューを閉じる。
ダイエットって、それ以上痩せてどうすんだよ。喉元まで出かかった言葉をぐっと飲み込む。
「でも、メッセージが届いたとき、本当びっくりしたよ。あれってヒロトが考えたの？」
Aは興味有り気に身を乗り出す。
「いや、おれっていうか……野坂っていうか……」
「あれ？ そういえば、野坂くんは来なかったんだね」
「ああ……なんか用事があるとか言ってたな」
「そうなんだ。帰ったら、野坂くんによろしく伝えてね」
再びウエイターがやって来て、オーダーしたものがテーブルに並べられた。
おれの前にアイスコーヒーが、Aの前にはカフェラテが置かれる。
それを見てAは困ったように笑う。
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鈴松信@誤字り姫@しんしん[受験により低浮上](プロフ) - コメント失礼します!面白くて一気読みしちゃいました!向こうの世界からオリオンの世界にエイリア石で来る…っていう考えが私の作品と似ていて凄く興味を惹かれました!更新無理せずにファイトです! (2019年6月11日 17時) (
レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年6月2日 1時
