scene227 ページ27
夜中にふと目が覚めた。
スマホで時間を確認すると、午前二時四十分と表示される。
喉の渇きを感じて、おれはベッドから起き上がり、部屋のドアを開けた。
「え……」
廊下を歩いてきた人影と目が合い、つい愕きの声が漏れる。
「よお」
暗がりの中、にやりと笑う。
「なにしてんすか……不動さん」
「別に、なんでもねえよ」
不動さんはそっけなく答える。でも、そこから動こうとしない。
「……なんすか」
じっと見られて、なんとなく決まりが悪くなる。
「石、見つかったか」
「あ、いや……まだですけど」
一気に目が覚めた。おれが失くしてしまったエイリア石は、まだ見つかっていない。
「そうか」
不動さんは、それきり黙る。
こんな時間に、出歩くなんて。不動さんも水を飲みに、食堂に行っていたのだろうか。
「どこ行ったんだろうな」
不動さんはぼそりと呟く。
「こんだけ探して見つからないなら、もう諦めた方がいいかもな」
「え……」
諦めるなんて言葉、不動さんの口から聞くことになるとは思わなかった。あれだけ切羽詰まっていたのに。
「いいんですか……諦めちゃって」
「見つからねえもんは仕方ねえだろ」
「でも……」
なんていうか、危ないものなんだろ、エイリア石って。それを野放しにしていいのか。それに、あれは災いを引き起こした原因って言っても、Aの大事なものなんじゃないのか。
「このまま出てこなければ、おれからも、Aからも遠ざけておけるからですか」
不動さんの眉がぴくりと動く。
「野坂が言ってました。なくなったからって、なかったことにはならないって」
おれの言葉を聞いて、一瞬間が生まれる。それから不動さんは肩を揺らして笑った。
「ずいぶん野坂に毒されてるんだな」
顎を上げて見下すように、不動さんはおれを見る。腹立つなその顔。おれは沸き上がる感情をぐっと抑えて言う。
「別に野坂に言われたからじゃなくて、Aにとっても大事なものだから言ってるんですよ」
不動さんはこっちを見なかった。黙ったまま、一点をじっと見つめている。
少しして、口を開いた。
「大事だって、Aが言ったのか」
「はい。大事なもので、お守りだって言ってました」
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鈴松信@誤字り姫@しんしん[受験により低浮上](プロフ) - コメント失礼します!面白くて一気読みしちゃいました!向こうの世界からオリオンの世界にエイリア石で来る…っていう考えが私の作品と似ていて凄く興味を惹かれました!更新無理せずにファイトです! (2019年6月11日 17時) (
レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年6月2日 1時
