scene224 ページ24
「お前は平気なのかよ、会えなくても」
形だけとはいえ、一応彼女だったんだから。
「会えないって言っても、永遠の別れって訳じゃないんだし」
「薄情なやつだな」
野坂は少し驚いた顔をする。
「薄情だなんて、心外だな」
「なら、もうちょい寂しがれよ」
「寂しいよ、十分」
「そうは見えねえけど」
野坂はいつもの無表情だった。
いなくなった人のことは、みんな段々と忘れていく。そして、最初からいなかったみたいに、空白が馴染んでいく。
そういうもんだって、おれは実感していた。でも、それがどうしても嫌だったんだ。
野坂も同じだと思っていた。Aとも関わりが深かったのに。
離れた途端、どうでもよくなってしまったのだろうか。
「でも、困ったな。Aちゃんの飛び降りた理由を知るのも、更に困難を極めるかもしれないね」
野坂は眉をひそめる。
「Aちゃんの協力が得られなくなってしまう訳だから。ほとんど、振り出しに戻ったようなものだな」
口元に手を当て、考え込む野坂に訊く。
「それは続けるのか」
「もちろん」
即答だった。
どうして、Aの真実を探ることには執着しているんだろう。会えなくなることにも、こんなにあっさりとしているのに。
「これは、ぼくの為でもあるんだよ」
おれが首を傾げると、野坂は両肘を膝についてこちらに身を乗り出す。
「Aちゃんが飛び降りた理由を知ることは、それを知らずに阻止できなかった自分への戒めだ」
余計にわからなくなる。
「ぼくが無知だったから止められなかったもの。次は……って、次はないに越したことはないんだけど、次こそは止めてみせる。それを知り伝えることが、彼女への懺悔でもあるんだ」
「よくわかんねえけど……自己満足ってことか？」
「そうとも言うね」
野坂は自嘲気味に笑う。
散々、Aの為って言っておいて。でも、そんなもんかもしれないな。結局は、相手の為とか言っておいて、自分の為なんだ。その方が、いっそ清々しい気さえする。
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鈴松信@誤字り姫@しんしん[受験により低浮上](プロフ) - コメント失礼します!面白くて一気読みしちゃいました!向こうの世界からオリオンの世界にエイリア石で来る…っていう考えが私の作品と似ていて凄く興味を惹かれました!更新無理せずにファイトです! (2019年6月11日 17時) (
レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年6月2日 1時
