夜明けを待つ月【吉良ヒロト】 (ページ33)

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画面に表示されていたのは、写真のデータフォルダだった。しかも、大量に保存してある写真の、全てにAが写っている。

「な、なに……これ」

Aは小刻みに震えていた。

写真の中には着替えの様子を盗撮したと思われるものや、明らかに隠し撮りだとわかるアングルのものばかりだ。

「マジかよ、まさか……」

「そう。ストーカーの犯人は、スタッフの中にいたんだ」

「そ、そんな……」

Aは口元を押さえ青ざめている。

「でもスタッフの中にいるって、よくわかったな」

「実は西蔭と鬼道さんにも協力してもらってね。逆に犯人を尾行して身元を特定したり、そこからスケジュールを調べ出してもらったりしたんだ」

鬼道さんも協力してくれてたのか。野坂と鬼道さんが組んだら会社ひとつくらい潰せそうだな。

「でも、こんなん見つけたところでどうすんだよ」

「警察に持って行くんだよ」

野坂はさも当然のことのように言った。

「でも、それって盗んだことになっちゃうんじゃ……」

Aは自分の左の二の腕を右手でぎゅっと掴んでいる。

そうだ、証拠を掴んだはいいけど、勝手に人の鞄あさって見つけたスマホを証拠として持って行くって、おれらが窃盗とかの罪に問われるんじゃねえのか。

「うん。だから、落とし物として警察に届けるんだよ」

落とし物？

「ロックを解除しておいて、警察が中身を調べられるようにしておいてもいいし、ロック画面を盗撮画像に設定しておけば、怪しいと思って、持ち主が取りに来たときに事情を聞くだろうし」

おれはぞっとした。こいつは敵に回しちゃだめなやつだ。

Aも開いた口が塞がらない様子だ。

「やだな、二人とも。そんな目で見ないでよ」

野坂は爽やかな笑顔を浮かべる。

「じゃあ、ストーカー事件は解決？」

Aがおれと野坂を交互に見て言った。

「そうだね。案外簡単だったな」

野坂は写真データをスクロールしている。おい、なに見てんだ。お前も捕まってしまえ。

「あー……なんだ、その……よかったな」

ストーカーにAを襲わせるとか野坂が言い出したときは、本当にどうなることかと思ったけど、案外あっさり解決した。

「うん。二人とも、本当にありがとう。西蔭くんと鬼道さんにもお礼しなきゃ」

Aは肩の荷が下りたように晴れやかな笑顔だ。