scene11 ページ11
「野坂くんは、やっぱり水着くらいじゃ照れないか……」
「はぁ！？」
おれはぎょっとした。水着？ なんのことだ。
「一昨日の雑誌って、水着のグラビアだったの。それを、見たよって涼しい顔で言えちゃうんだもん。やっぱ野坂くんは大人だなって」
Aは感心するように言った。
「お前、んなことまでやってんのか……」
で、野坂はそれを見たのか。へー、いや、別におれは興味ねえけど。
「一応アイドルなんだし、水着くらい着るよ」
一応て。そこは自信もてよ。
「悪い、遅くなって」
背後で声がして、振り向くと、氷浦だった。
それからすぐに灰崎と不動さんも合流し、買い出しの面子が揃った。
・
店に着くと、頼まれたものを探しに、それぞれ散っていった。
おれはメモを見ながら日用品のエリアを見て回っていると、雑誌の並んでいるコーナーに目がとまった。
その中に、あいつが表紙の雑誌があった。
探したわけじゃねえよ。目立つとこに置いてあって、たまたま見つけただけだ。
表紙のAは、真っ白の水着で、はにかんだような表情をしている。
水着……ね。いや、別にあいつの水着が見たいわけじゃねえ。
あいつは一応イナズマジャパンの仲間だし。仲間の活躍くらい、知っといてやらねえと。断じて水着が見たいわけじゃねえ。違えから。誰に言い訳してんだ、おれ。
おれは、周りをぐるっと見回し、あいつらが見ていないことを一応確認した。別に、何もやましいことはねえけど。見つかったら面倒なことになりそうだからな。
雑誌を手に取る。表紙のAと目が合った。
表紙をめくると、また別のデザインの水着を着たAが、砂浜に寝転がっている。
すげえ、ちゃんとグラビアじゃねえか。……なんだその感想。
つーか、あれだな、うん。意外と、あれだな。意外とあんだな、あいつ。ふーん……悪くねえな。悪くねえってなんだ！
……野坂もこれ見たのか。
「思春期だねェ、ヒロトくん」
「なっ……！」
急に頭のすぐ後ろで声がして、慌てて雑誌を閉じ、振り返る。
「グラビア雑誌は買い出しリストに入ってないぜ」
不適な笑みを浮かべる不動さんが立っていた。
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作成日時：2019年1月29日 0時
