キズモノ ページ7
暫くの沈黙が続いたとき、先に動いたのは芥川だった。羅生門、あれほど人を消すのに特化した異能力を見たことがない。他に何かの役に立つだろうかなど、Aには関係の無いことだが。ごうごうと音を立てて喰い殺さんとばかりに大口を開ける羅生門を寸での所で避けるが、手入れが行き届いていない髪は残念ながら、はらはらと地面に落ちていった。
「避けるか。しかし、次は無い。その薄汚い髪のように。」
「死にたくないんでね、って人の髪を莫迦にするのやめろ莫迦」
今度はAの番だ。白虎へ再び化け地面を思いきり蹴りあげた。そして強風のように芥川へ接近する。そう、するはずだった。
ぱぁん、と何かが発砲される音が背後から響いた。その次に、Aの背に激痛が駆け巡った。まさかもうひとり居たと言うのか。
「芥川先輩!」
麦畑のような、美しい金髪の女性が目に映った。手には拳銃、どうやら自分は彼女に撃たれたらしい。樋口、と芥川の口が動いた。彼女は芥川の後輩なのか?だとしたら二対一は卑怯にも程がある等とこの状況でたらたらと脳内で文句を垂れた。
逃げなくては、逃げねばならない。水色の光がAを包み込む、今度は墨を真っ白な紙に零したように真っ黒な鴉が醜くギャア、ギャア、と叫びながら鉤爪で芥川の頬を浅く切った。
自分では此奴には勝てない、そう本能的に悟ったAはプライドなどかなぐり捨てて羽をばたつかせながら上空へ逃げた。
つう、と芥川の頬から流れた一筋の血を見て一生傷が残ってしまえ!と、嬉しそうに吐き捨てて。
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左目から鯖味噌(プロフ) - 結さん» 一夜と六夜しか未だ読めずにいますし、ひとつの夢と一夜の内容をかけたかったので夢一夜とサブタイトルを付けさせて頂きました主に短編、中編作品ばかり読んでいますが上手く物語に入れる事が出来るように頑張りたいと思います。コメントありがとうございます。 (2016年6月11日 12時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
結(プロフ) - 夢十夜ですね!私、大好きです!いつも応援してます。これからも頑張ってください。 (2016年6月11日 11時) (レス) id: df8cc1ba1e (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - Hiyoriさん» 感想ありがとうございます。楽しみにされた分、良いと思って頂けるような作品を作ることが出来たらな、と思っております。応援に応えられるよう、努力致します。 (2016年5月16日 23時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
Hiyori - 続きも楽しみにしてます!頑張ってください! (2016年5月16日 22時) (レス) id: 4584690b17 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - konohaさん» いえいえ、お気になさらず。見て下さりありがとうございます。応援に応えられるよう、邁進致します。 (2016年5月15日 20時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2016年5月15日 17時