地獄に響けども俺の耳には残らない ページ6
どうしてこんな事になったのだと、ロマーノは頭を抱えた。
「聴かせてくれ君の声」
「や、やめろやめろー!」
ロマーノの肩をそっと抱き、囁き掛ける声の主、ファントム・オブ・ジ・オペラ。これが現在ロマーノが頭を抱えることとなった原因である。
何故、フランスから出た事もないような男とロマーノが共に居るのか。こんな状況になってしまえば説明せざるを得ないのだが、一番初めに結論を記すとすれば、完全にロマーノの自業自得なのであった。
フランスへ遊びに来たロマーノは、沢山のサーヴァントに歓迎された。楽しく談笑していたところ、素朴な疑問がロマーノの元へと降りて来た。
「そう言えば、宝具ってどんなもんなんだ?」
一同は顔を見合わせて困ったふうに笑う。サンソン曰く、宝具は極めて威力が強く、町ひとつ一夜で消滅させるのも安易なものであり、そう簡単に見せられるものではないとのこと。大真面目に説明をしてくれたサンソンに対し、ロマーノが口を尖らせて不貞腐れているのを見たデオンがとある提案をした。本当はこんな事、言いたくはないのだがと顔に浮かんでいたのが今でも思い起こされる。
「それなら、誰も居ない夜のオペラ座へ行ってみるといい。きっと彼なら見せてくれるはずだ」
その言葉に各々意見を言うが、では他に誰が宝具を見せるのだと復讐者がひと声上げると、皆それで良いと小さく頷いていた。その反応を見てやっぱりいいやと言いたくなったのだが、美人の提案を無下に出来る筈もなく、伊達男ロマーノはそうして誰も居ない夜のオペラ座へと出発したのだ。つまり、そういうことだ。
「クリスティーヌ…」
ひっと情けない声が出る。オペラ座で待っていたのはベートーヴェンでもハイドンでもバッハでもモーツァルトでもなく、陰鬱な怪人だったのである。彼らが見せてくれるであろうと提案したサーヴァントとは、彼なのである。
どうやらファントムはロマーノの事をローレライと勘違いを起こしているらしい。苦労人のサンソン曰く、精神汚染というものが根強く施されており、扱いが非常に難しいとのこと。もっとましな奴は居なかったのか!
「違う、俺はクリスティーヌなんかじゃない。ロマーノだ!」
「ロ、マーノ…?」
悲鳴にも似た声を掛けた時、ロマーノの頬へ添えられようとした異形の手が引っ込められた。一体どうしたのだ。そう思った頃にはファントムはロマーノからあからさまに距離を取っていた。
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2018年4月28日 11時