醜悪 ページ19
反転。今日の自分は何故こうも反転ばかりするのであろうか。血液が不足している体で考える事すら億劫になっている。
チラリと絵を描いていた方へ目をやれば、作品は無事だった。大方、ここでAをずっと待って居たのであろう。影、芥川龍之介はにたにたと笑みすら浮かべていて、薄気味悪い。きっと、Aが手を掛けた女性たちの最後に見たAの顔もこんな物なのだろう。醜いものだ。人間は人間であることを捨ててしまえばこんなにもなってしまうのか。
「何故貴様が探偵社の人間と居るのかは置いておいて…ポートマフィアへ下れ、ジャック・ザ・リッパー」
「断る」
ぶつり。芥川の手には所々に血痕がこびり付いた銀色のナイフが握られていた。恐らく、頬の痛みはそれが掠めたからであろう。組み伏せられ、馬乗りになられ、脇腹の痛みは増す一方だ。
それを知ってか知らずか、はたまた無意識か。芥川は足に力を籠め脇腹を抉る様に身体を揺らす。
ぐう。踏み潰された蛙のような声が出る。それでも芥川は笑っていた。
「良いのか？貴様が首を縦に振らねば奴等は…」
「しつこいのだよ芥川、君って可哀想だ」
脂汗を浮かべながらAは無理に笑う。その姿の何と滑稽な事であろうか。玄関口でAの名を呼ぶ太宰や国木田が見たらさぞ笑う事であろう。
拘束されていない手でナイフのブレードを小突く。これはAが靴箱に押し込んでいたシースナイフ。縄よりもこれを頼りに靴箱を漁ったのだが、どうやらこの男が持っていたらしい。
ブレードから芥川の細い手首、関節部分、肩、首、顎、そして頬。順を追うかのようにその手でひたひたと触れる。Aの手は余程冷えているのであろう。芥川は顔を顰めた。
「ポートマフィアがどういう組織か位知っているよ。確かに私にとってそこは楽園であろうね。けどね、それはジャック・ザ・リッパーとしての私であってウォルター・Aとしての楽園では無いのだよ」
「自分の罪を生きる為ならば是非も無しと肯定するだなんて可哀想な人。愛してあげようか？」
芥川の頬を撫ぜる。先程も咳をしていた事から身体の調子があまり良くないのであろう。美青年と謳うであろうその風貌にしては頬の肉が薄い。
「貴様に、僕の何が分かる！」
「分かる訳が無いだろう！他人のましてや男の考えている事なんて理解したくはないのだよ！莫迦かね君は、自分の事を全て理解し肯定してくれる他人なんて」
「世界中を駆け回ろうが見つからない！」
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左目から鯖味噌(プロフ) - 書けるように頑張りますね。感想ありがとうございました。 (2017年12月27日 11時) (
レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 21さん» 有難う御座います。言葉が気持ち悪くないか何度も自問自答していたのですがそう言って頂けて嬉しいです。更にはご本人の方にも興味を持って頂きとても喜んでおります。お金を払いたい位だなんて恐れ多い言葉以外の何ものでもありません。楽しみにして頂けるような作品が (2017年12月27日 11時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 七葉さん» コメントありがとうございます。大抵今後の展開を考えない行き当たりばったりの不安定更新ではありますが七葉さんの温かいお言葉のお陰でまだまだ頑張れそうです。これからもっともっと楽しめるお話にしていく事が出来たら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年12月6日 21時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - とても続きが気になります!これからどうなっていくかが楽しみですね!更新頑張ってください!応援してます! (2017年12月6日 20時) (レス) id: 88ee75b376 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：左目から鯖味噌 | 作成日時：2017年11月3日 14時
