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爆発物 ページ13

頭上注意と書かれた黄色のヘルメット。それと何のつもりか棒状に丸めた新聞の束。おもしろグッズにも程がある。此処は探偵社という題材で人々を楽しませている芸能事務所なのではないかとすら思ったが、それならば何故あんな男が居るのか分からない。一応、芸能事務所ではなく本当の探偵社だということにしておこう。否、しておきたい。

「じゃあ、行ってくる」
「健闘を祈る」

今生の別れの様な、フラグが立ってしまうような会話。抱擁こそしないが、したら絶対ムードがあるなと頭の片隅で思う。
携帯電話を起動し、アラームを設定する。音は最大。制限時間は五秒。即ち、五秒後にこの探偵社で爆音が鳴らされる。それを滑らせる形で部屋の隅へと投げる。青年は気付く素振りも無く机の上で怒鳴り散らしていた。

五秒は案外短い。すぐにアラームが時間を知らせるべく爆音で存在を主張する。ちなみに、設定した音楽は学生服に身を包んだ戦士達で御馴染のあの曲である。

「だ、誰だ!?」

音楽の鳴る方向へ青年が視線を向けたその時、物陰からそれをじっと見ていたAは風の様な速さで青年の懐へと突っ込み、その横っ面を新聞紙で容赦なく叩く。突然の痛みに驚く青年の力が弱まったところでナイフとスイッチを叩き落とし、着物の少女を自分の方へと引き寄せる。人質を救助してしまえば、永遠にAがマウントポジションを得ている事となる。

少女を安全な場所へ誘導するべく、青年から距離を取ればAは眉を下げた。

「残念だけど青年、これで終いだ。警察には通報しないから、猛省して欲しいのだよ」
「ば、莫迦め…俺を止めた所で爆弾のスイッチは既に起動しているんだぞ!」

勝ち誇った様に笑う青年。そんな莫迦な事があり得るか。無差別テロではないのだぞ。ナイフを取り戻そうとする青年よりも早くナイフを手にしたAは、爆発物に書かれた制限時間を確認する。残りは一分も無い。

どうする、どうする。心臓が痛い。頭も痛くなってきた。探偵社の扉の向こうにエレベーターが見える。密室で爆発させれば間に合うだろうか。それでも一応もうひとつ程密室に近い何かが欲しい。新聞は、駄目だ。薄すぎる。

爆発物は、薄く小型だ。口の中に含める程度には、小型だ。

そうだ、飲み込んでエレベーターの中へ入ってしまえば良い。そうすれば自分は吹き飛ぶが皆は助かる筈だ。
確信してしまえば行動は早かった。爆発物を手にし、大きく口を開ける。喉が裂けても良い。兎に角、胃の中へ。

合格→←侵入



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左目から鯖味噌(プロフ) - 書けるように頑張りますね。感想ありがとうございました。 (2017年12月27日 11時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 21さん» 有難う御座います。言葉が気持ち悪くないか何度も自問自答していたのですがそう言って頂けて嬉しいです。更にはご本人の方にも興味を持って頂きとても喜んでおります。お金を払いたい位だなんて恐れ多い言葉以外の何ものでもありません。楽しみにして頂けるような作品が (2017年12月27日 11時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 七葉さん» コメントありがとうございます。大抵今後の展開を考えない行き当たりばったりの不安定更新ではありますが七葉さんの温かいお言葉のお陰でまだまだ頑張れそうです。これからもっともっと楽しめるお話にしていく事が出来たら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年12月6日 21時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - とても続きが気になります!これからどうなっていくかが楽しみですね!更新頑張ってください!応援してます! (2017年12月6日 20時) (レス) id: 88ee75b376 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2017年11月3日 14時

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