▽ ページ44
_
「どうしたん、A」
その言葉にはっと瞬きを数回すると
目の前に賢ちゃんの顔があった。
『ごめん考え事してた』
「なにを？」
『大したことちゃうよ』
不思議そうに顔を見合わせる
賢ちゃんとリリーが
妙に気まずくてお酒を煽る。
自分から別れを決断したのに本当に情けない。
その上先輩なのに。
リリーと別れた半年前のことを
思い出してた なんて言えるわけもない。
「あの、俺の相談聞いてもらっていいっすか」
お酒を3杯くらい飲み
お笑い談義を一通りして
次はなんの話題だ、となった頃。
リリーがそう言った。
「もちろんええよ。どうしたん？」
先輩肌の賢ちゃんは乗り気で耳を傾ける。
ここそんな仲良いイメージないけど
なんで今日来たんかな、と思っていたけれど
関係は悪くないらしい。
「俺好きな子おるんですけど、」
「え何、恋バナ？
それやったら俺ら向いてないで。
な、Aも向いてないやろ」
『へ？あーうん。向いてない』
リリーの口から出てきた好きな子という単語に
胸がズキンと痛んで苦しい。
別れたとはいえ
まだあんたの好きな子の話を聞けるほど
メンタル回復してないねん、
なんてことは言えるはずもない。
ええな、その子。
リリーみたいに掴めない男のハートを
がっちりと掴んだんやな。
どうやって？
私なんて付き合ってたのに無理やったで。
そんな誰にもいえない本心が
心の中でぐるぐると回る。
「向いてなくても聞いてほしいっす。
...俺ほんまに好きやったんですけど
いきなり振られたんすよね」
「リリーが？モテるのになぁ」
「俺が告白してOKもらって喜んでたら
ようわからんうちに振られて、」
「あ、付き合ってたん？なんで振られたんやろ」
話が進む2人を前にして
私の心臓は止まりそうだった。
リリーくらいの人だったら
半年の間に新しく好きな人ができて
その人と付き合って 別れて
って何もおかしくない。
「さぁ...聞けんかったんすよ。
やから聞こうかな、と思って」
「おーええやんええやん、聞いてまえ」
「どう思います？Aさんは」
首をこてんと横に傾けるリリーは
あざとくて可愛い。
少しピンクになった頬も
ぽてっとした唇も全部可愛い。
でもそれを私に聞くのは酷すぎる。
『さぁ知らん、その子でもないのに』
「後輩の相談真面目に答えたれよ」
『賢ちゃんかて言うたやん。
私そっち系の相談無理なんやって、ほんまに』
_
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 665人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくら(プロフ) - 初めまして！ 他のシリーズも読ませていただきたいのですがパスワードを教えていただくことは可能ですか？ (3月27日 2時) (
レス) id: 29a1fe95ee (このIDを非表示/違反報告)
秘密のアッコちゃん(プロフ) - はじめまして！シリーズ全て読ませて頂きたいのですがパスワード教えて頂くことは可能でしょうか？ (1月11日 22時) (レス) id: b2629d5630 (このIDを非表示/違反報告)
☆kon☆(プロフ) - 初めまして！どの小説にもめちゃくちゃキュンキュンしました！特に南條さんと辻さんの、じれったい2人の距離感とかもやもや感が特徴を捕えた文章で表現されていて最高でした！！ぜひ他の作品も読ませていただきたいのでパスワードを教えて頂けませんでしょうか＞＜ (12月27日 22時) (レス) @page38 id: 8e45766978 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - 初めまして！過去のお話も読みたいのでパスワード教えていただくことはできますか？ (12月24日 9時) (レス) id: 6b7bdcebc6 (このIDを非表示/違反報告)
hina - 何回読んでもキュンキュンします！他のお話もまた読みたいです｡パスワード教えて頂くことはできますか？ (2022年2月12日 6時) (レス) id: bdfbcba29a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：hico | 作成日時：2021年5月26日 17時
