子供15 ページ15
「どうしたらいいか、分からないの」
数分前までの私は、ただ謝ればいいと思っていた。
けど、そうじゃないみたいだ。
今ここで素直に謝ったところで、解決する問題じゃないと心のどこかで勘づいている。
幼い頃から一緒にいるんだ、そういう雰囲気だというのも理解出来る。
「珍しいじゃねぇか、銀時の事でAが頭を悩ませるなんてなァ」
すると、晋助兄さんは立ち止まり、繋いでくれていた手をそっと離した。
私と向き合い、鋭い目つきで私を捉える。
「バカな男だぜ。こんないい女を放って誑かして束縛して操って」
矛盾だらけの言葉だ。
けど何故かその時は、理解しようと必死にならなくても、自然とその言葉たちが自分の中に浸透していった。
「他の男に所有物が触れられた瞬間、ガキのように独占しようとする」
私の目を真っ直ぐ見て言う晋助兄さん。
私は、その返事をするように首を横に振った。
「ううん、違う。私は銀ちゃんの所有物なんかじゃないよ、銀ちゃんも私を独占しようとなんてしてない。妹が男と接してるのが気に食わなかった兄の気持ち。そうでしょ?」
「ッハ、やっぱ分かっちゃねぇなAは」
言われると思ったセリフが、きっちり返ってきた。
だって…言ってて自分でも違和感を感じたんだもん。
本当にそんな理由で銀ちゃんと気まづくなっているなら、とっくに私は仲直りしている。
なんの躊躇いもなく謝罪している。
でも、今回はそうじゃない。
銀ちゃんが纏っている空気は、そんな甘いものじゃない気がした。
答えが返ってくるのだと思い待っていると、晋助兄さんは「ックク…」っと独特の笑い方をする。
そして、急に手を伸ばし私の胸ぐらを掴んだ。
グッと引き寄せられると、唇が触れるギリギリで止められる。
心臓が止まりそうになり、思わず目を見開く。
「食いてぇんだよ…分かるか?頭の上から足の先までなァ…」
「っ!!!」
怖くなり、彼の胸を思いっきり押し距離を離した。
はぁ、はぁと呼吸を整える。
く、食いたい…?一体何言って…。
「A、てめぇはガキじゃねぇ。もう立派な女だ。自覚してんだろ?」
胸を押え、額から流れてきた冷や汗に動揺しながら、晋助兄さんの声に耳を傾ける。
「ガキだと思ってた自分の所有物が女に変わった時、男はどうなると思う」
ゆっくり私に近づき、私の顎をそっと人差し指と親指で持ち上げた。
無理やり目線を合わせられる。
「銀時は、どうだろうなァ」
138人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:お茶 | 作成日時:2019年11月8日 23時