子供44 ページ44
私と総悟くんは、蒼くんの頼み事を聞いた。
そして、二人して顔を見合わせ、苦虫を噛み潰したような表情をする。
…そう、か。蒼くんは、それが望みなのか。
「でもね、蒼くん…その、」
私は蒼くんのその願いを、少しでもいい方向に持っていこうとしたが、その口を閉じる。
今何を言おうとしたんだろう、私。
「姉さん、こりゃめんどくせぇ内容でさァ」
小声で総悟くんが耳打ちをしてくる。
確かに、悪く言えば面倒なのかもしれない。
ただ、年頃になってくれば純粋な疑問、そして期待が湧き出てくる。
それを殺したいとは思わない。
ただ、代償としてついてくる後悔や絶望を蒼くんに味わって欲しくない。
この小さな体に、悲しみを背負わせたくないのだ。
「ダメ、かな…」
視線を落とし、私たちの反応を見て察する蒼くん。
その彼の姿を見て、私の胸が締め付けられる。
ここで断ったらどうなるんだろうか。
この子が成長してから、自ら調べさせるという手もある。
そのほうが負う傷は浅く済むはずだ。
精神的にも強くなっているだろうし、多少現実を受け止めきれる。
けど…
「分かった。その頼み事、引き受けるね」
「ちょ、姉さん嘘ですよねィ、あんた」
総悟くんにそう言われたが、私は気にせず言葉を続ける。
「大丈夫だよ、絶対に探し出すからね」
______蒼くんのお父さん
☕
蒼くんと初めて会った日、赤坂さんのお宅に訪問した時。
私は、その日のうちに屯所に帰り調べ物をした。
彼の父親の事を。
今から約五年前に、父親と母親は離婚をしている。
そして、現在彼は既に新しい家庭を持っている。
妻もいれば子供もいるのだ。
笠神(カサカミ)という苗字で、円満な家庭を築き上げている。
つまり、探し出すことが出来ることは確定している。
今すぐにだって、蒼くんを笠神さんに会わすことが出来る。
けど、蒼くんがその光景を見てどう思うのだろうか。
母親と一緒の方がいいのではないのだろうか。
様々な疑問や葛藤が入り交じり、私は複雑な心境になってしまった。
けど、蒼くんには父親に会う権利がある。
その意志を曲げる必要は無い。
だから協力したいと思ったのだ。
私は蒼くんの手を握り、とりあえず一度屯所に行こうと促した。
総悟くんもそれには賛成してくれて、雪道を三人で歩く。
「お母さんにはその話したの?」
そう聞けば、蒼くんは悲しげな顔で私の顔を見上げた。
「父ちゃんの話、嫌いなんだ」
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お茶(プロフ) - アルムさん» 素敵なコメントありがとうございます!!心の支えでございます涙次回作も宜しければ読んでいただけたら光栄です!ありがとうございました!! (2019年11月8日 23時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
アルム(プロフ) - お茶さんこんにちは! 番外編完結おめでとうございます。1シリーズのときからずっと好きで毎日読んでいました。お茶さんの綴る文章、大好きです。毎日お疲れ様です。次回作も楽しみにしています。 (2019年11月8日 23時) (レス) id: 4726a4adc0 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - みゃんさん» わぁぁあコメントありがとうございます!続き頑張って書きあげますね!! (2019年9月4日 0時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
みゃん - 一気に読んじゃいました!めっちゃ面白いです!!続きが早く見たいです! (2019年9月3日 22時) (レス) id: 21dc5ec498 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - あくび少女さん» コメントありがとうございます!ニヤニヤ…( -∀-) (2019年9月1日 1時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月9日 2時