子供26 ページ26
「攘夷戦争中、一人の女戦士がいたと歴史に刻まれている。…冷酷な艶美ってのは、Aのことだったのか」
そっと、土方さんの口から呟かれた。
「…はい」
そう肯定の返事をすれば、隣の総悟くんはため息をつく。
「どおりで…。実は、万事屋の旦那が白夜叉だってことを俺達は知ってやしてねィ。だからあんたと親しい関係なんだと今、明確に分かりやしたよ」
知っていたんだ…。
当時、白夜叉と冷酷な艶美として戦っていた私達だったが、先生が消えた同じ日に、姿を消した。
その後、行方を晦まし、消息不明の状態だった。
私たちを知っているのは、私たちだけ。
死んだと考えた人は、少なくなかったはずだ。
存在自体もなかったことにされていたと思っていたが、さすが真選組。
攘夷戦争時代の戦士の名も、把握していたようだ。
「騙すつもりはなかったんです。けど、隠したいという思いが勝ってしまい…すいませんでした」
重い空気に痺れを切らし、私は頭を下げた。
口に出した「攘夷戦争」の四文字。
たったそれだけで、走馬灯のようにあの日の記憶が駆け巡る。
思い出したくない、あの一瞬。
曇天。
寂しげに揺れた銀髪。
諦め何もかも捨てようとした横顔。
流れた涙。
振り下ろされた刀。
愛しい人を、その手によって…
銀ちゃん…どうして。
どうして、なの…。
先生!!!!!!
呼吸が荒くなっていた。
何度も何度も、あのワンシーンが繰り返される。
汗が滴り落ち、息ができない。
その時、そっと背中に手が置かれた。
それは何度も落ち着けと上下に滑り、私は我に返った。
「無理して話させる内容じゃなかったみたいですねィ。謝るのはこっちの方でさァ」
総悟、くん…。
通常の呼吸を取り戻し、汗も引いてきた。
私の様子を見て安心したのか、総悟くんの手も離れたいった。
「ちょっと待ってろ」
そう言い、立ち上がる土方さん。
そのまま部屋を出て行ってしまった。
「Aさんがどんな状況下に置かれ、どんな経験をしたのかは知りやせん。けど、あんたは俺たち真選組の仲間でさァ。荷が重ェなら分けてくれてもいいんですぜィ」
優しい声が、隣から聞こえた。
ゆっくりとそちらを見れば、彼は柔らかく微笑んでいた。
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お茶(プロフ) - 狼さん» ご指摘ありがとうございます!注意書きにもありますが、原作と他は多々違うところがありまして、、!このお話の都合上3番隊の人数を増やしておりまして汗申し訳ありません汗 (2019年10月9日 20時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
狼 - すみません…今更なんですけど…子供扱い45のところの『三番隊の連中』ってあるじゃないですか…三番隊って…斉藤終しかいないんですよ…(コゴエ (2019年10月9日 20時) (レス) id: a55c73a212 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - みのりさん» ありがとうございます!!これからも頑張ります!!ぜひ子供扱い2子供扱い3も見てくださいね! (2019年1月22日 23時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 面白い展開ですねw。これからも頑張ってください!! (2019年1月22日 15時) (レス) id: f121079414 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - Fall ill appleさん» うわぁぁあコメントありがとうございます!訂正しておきます! (2019年1月1日 1時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お茶 | 作成日時:2018年8月25日 0時