笑顔４０ ページ40
佐藤先輩の声が途切れ、声がかぶさった。
声がした方を見上げれば、そこに立っていたのは
「お兄さん！」
痴漢に遭った私を助けてくれた、犬顔のお兄さんだった。
佐藤先輩は言葉を失い、唖然としている。
私は立ち上がり、お兄さんの元に駆けつけた。
「なんや再会するとか運ええな〜」
「偶然ですね！お友達とですか？」
「そうですそうです」
あそこの席、と指さされた方を見る。
…って、あれ、もしかして…。
「ま、丸山さん！？」
「え！？知ってるんすか！？」
「は、はい…実は、私の彼氏のお友達でして…」
丸山さんもこっちに気づいたようで、ビックリしている。
「友達〜？そっち行ってきてもいいよ〜！」
酔っ払った課長に、後ろから声をかけられる。
私はクルッと回って一礼し、行こうとした。
すると、佐藤先輩が私の手を掴んだ。
「あっ…い、行っちゃうの？」
「すいません、少しの間いいですか？」
「…う、うん」
徐々に力が抜けていき、離された手。
私は畳から降りて靴を履いて、お兄さんと一緒に丸山さんの元へと歩いた。
「Aちゃ〜ん！奇遇ですなぁ！」
明るい丸山さんのテンションで、ハイタッチを要求される。
「おい丸、気安く女の子に触ろうとすんなや」
すかさずお兄さんの辛いコメントが入り、そっと引っ込めてしまった丸山さん。
お兄さんに座ってと促されたので、お兄さんの隣に腰を下ろした。
私とお兄さんが、どんな経緯で知り合ったのか丸山さんに説明する。
「ひゃ〜、こんなこともあるんやな！亮ちゃん！」
…亮ちゃん？
どっかで聞いたことある名前…。
「あの、失礼ですがお名前をお伺いしてもいいですか…？」
イケメンお兄さんに聞いてみる。
「錦戸亮です」
「あ！！章ちゃんの幼なじみさんだ！！」
「章ちゃん！？待ってや、じゃあ章ちゃんの彼女さんって…」
「はい…私です」
「AAちゃんやん！わぁ、ほんまに偶然やな！！」
「世界って意外と狭いね〜」とのほほんと口にした丸山さん。
ほんと、世界って狭い。
なぜ私の名前を知っているのかと聞けば、章ちゃんが自慢メールを散々していたらしい。
「彼女できたんやーすごいやろ亮〜って、メールきたで」
「恥ずかしい…」
「ええやん、章ちゃんとお似合いやと思う」
ポンポンと進んでいく会話。
章ちゃんのお友達に、悪い人はいないみたいだ。
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作者名：お茶
| 作成日時：2018年8月6日 22時
