笑顔１７ ページ17
「…あぁ、ごめんな来てもろうたのに。Aちゃんやねんな。歳はいくつなん？」
急に渋谷さんが話しかけてきた。
「２３です」
「え、６つも下やんけ」
って事は、渋谷さんは２９歳ということになる。
うわぁ、３０近いなんて全く思えない若さだ。
目はキリッとしてて、子供みたいなペチャンとした髪型がそうさせているのかもしれないけど。
「で、二人は付き合うてるん？」
「「え？」」
私と章ちゃんの息がピタッと合った。
いい年の男女が１つ屋根の下で共同生活。
傍から見たら何かあって当たり前だけど…。
章ちゃんは、何もしてこない。
紳士なのか、私に魅力がないのか。
後者の方が圧倒的だと思うけど。
「ちゃうよ渋やん！Aはちゃんとした人がおるもん！」
「ちゃんとした人？何やねんそれ」
「ほら、会社の先輩やろ？」
これは、全く嫌味なく言われているパターンか。
章ちゃんは時々、何の悪気もなくグサッと来るようなことを言う。
それは間違ってたり、間違っていなかったり。
まちまちだが、今回は
「違う、よ。佐藤先輩はただの先輩。今は彼氏も好きな人もいません」
しっかり否定しておきたかった。
章ちゃんに誤解されたくないって思いの方が強くて。
勝手にそんなこと思っていいのか分からないけど。
「えらいべっぴんさんなのに、おらんのか！」
やけに食いついてくる渋谷さん。
関西の人って、女の人口説くの上手いのかな。
章ちゃんも渋谷さんも、私のこと褒めすぎ。
…間に受けてはダメなのに、やばい。照れてしまう。
「もうええやん！A困ってるやんけ！」
章ちゃんがバタバタと両腕を振るので、この話を無理やり終わらせた。
「そや、やすあの子どうしたん。あの〜珍しい名前の」
「…愛羅(ｱｲﾗ)のこと言うとる？」
「そやそや！結局別れたんやっけ」
「ふられた。それこそ誤解されて終わったんよ」
「っひひ、やすらしいわ。よかったやん、あの女俺嫌いやってん」
「まぁ終わったことやし何も気にしてへんからええよ」
多分、元カノの話だと思う。
初めて名前を聞いた。
愛羅さんって言うんだ。
でも、章ちゃんは落ち込む様子もなくて、なんだか呆れてる。
どんな人だったんだろう。
二人の会話を聞いていたら、時刻はお昼を回っていた。
「飯、作ったる」
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作者名：お茶
| 作成日時：2018年8月6日 22時
