笑顔１１ ページ11
その様子を見て、章ちゃんはバツが悪そうに顔を顰めた。
「あ、ご、ごめん…責めるつもりやなくて…ほんま、ごめん」
あ、あれ…なんで。
私も、泣くつもりじゃなかったのに。
なんで涙が零れちゃうの。
章ちゃんはなんで、謝るの。
彼は私の目線まで合わせるようにしゃがむと、私の膝に手を置いた。
「顔見せて？ちょっと心配になっただけやねん。カッとなってごめんな」
優しい声音は、より私の涙を煽った。
下げて上げるタイプなの？ちょっとずるいよ、それ。
「わ、たしも…遅くなってごめんなさい」
目を合わせ震えた声でそう言えば、章ちゃんは笑ってくれた。
よかった…いつもの章ちゃんだ。
「お風呂、入っておいで。はよスッピン見せてや」
「何言ってるの…」
笑って見せれば彼ももっと笑ってくれて。
心配してくれたんだ、怒ってくれたんだと冷静になって思う。
お兄ちゃんみたい。
家族みたい。
なんだか、そう思った。
次の日の朝。
いつも通り早起きをして、二人分のお弁当を作る。
今日は…サンドウィッチにしよう。
リンゴとイチゴとブルーベリーのジャム。
卵とレタスとハムとチーズ。
色々考えているうちに、たくさん作ってしまった。
簡単に作れる罪だ。
仕方ない、誰かにあげよう。
…誰に？
清水先輩？いやいやいやいや、絶対やだ。
じゃあ、佐藤先輩？昨日のお礼に…。
「おっ、これ今日の朝ごはん？」
「キャァッ！！」
急に後ろから声がして、驚いて声を上げてしまった。
章ちゃんが私の肩に顔を乗せて、覗いてくる。
「何驚いてるん〜」
「ビックリさせないで！…あと、これお弁当にしようと思ったんだけど作りすぎちゃって」
や、やばい…。
この距離はおかしい。
心臓が壊れちゃうよ。
「朝ごはんも食べたい！ええ？」
「逆に朝とお昼同じでもいいの？」
「全然へーき！だって絶対美味しいやん」
やっと離れて、席についた章ちゃん。
朝から心臓に悪い…。
私は余っているお弁当箱を取り出し、洗ってからサンドウィッチを入れた。
これは、佐藤先輩に。
おやつにでも食べてもらおう。
章ちゃん、私と詰め終え、朝ごはん用にお皿に盛り付けて運んだ。
「いっただっきまーす！」
子供みたいに元気に手を合わせる章ちゃんに笑いながら、二人で朝ごはんを食べた。
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作者名：お茶
| 作成日時：2018年8月6日 22時
