拗らせ王子と純情娘 ３５ ページ35
〜A side〜
私が教員になってから半年頃の話。
この高校に来る前は中学校にいた。
当時は非常勤で担当クラスは持っていなかった。
そんな私に懐いてくれる生徒は沢山いた。
「あの子」も、その内の一人だった。
長澤 優斗くん。
私が彼と出会ったのは中学二年生の夏休み前の放課後。
図書室の隅で椅子に座らずしゃがみ込んで本を読む姿に、堪らず声をかけたのを今でも覚えている。
リアルに、鮮明に。
「…席、座らないの？」
「あ…」
たった一言だけ口にして、まるで怒られている子供のように目を動揺の色に染めた彼に慌てて言い直す。
「あ！い、いいよね！たまには床で本読みたいよね！いやぁ、私も小さい頃に戻ってそうしよっかなー！」
手に持っていた本を彼に見せ、隣に座ってもいいか聞いてみる。
少し躊躇った彼だったが、小さく「うん」と頷いてくれた。
悪い子ではないみたい。
「何の本読んでるの？」
「…童話」
「童話！素敵だよね〜、小さい頃の私の夢はシンデレラだったの」
「…」
「あ、ごめんまた私大きい声出して…」
「いいね、シンデレラ」
ボソッと照れたように呟いた彼の顔を思わず見つめる。
長い前髪から現れたのは、無垢な少年の優しい笑顔だった。
そこから私は、毎日のように放課後図書室へと足を運んだ。
その中学の図書室は人気がなく、図書委員と先生くらいしかいなかった。
けど長澤くんは毎日来ていて。
私は彼に会いに行くために図書室に通っていた。
そんな彼も私に懐いてくれて、徐々に自分の内を話してくれるようになった。
彼の両親は非常に仲が悪かった。
ただ長澤くんには優しく、しかし厳しく。
立派な大人に育つようにと教育は硬く。
そんな環境で育ったため、口数は減り、文字数が少ない童話や絵本を好きになったとか。
「A先生、絵本ってね、簡単に見えるけど難しいんだよ」
「？そうなの？」
「うん。この一つ一つの絵に込められた気持ちとか、少ない文字で伝える繊細さとか、分かりやすさとか。とにかく、伝えるのって難しいんだよ」
一ページに手を添えて穏やかな表情で目を細める長澤くんに、少し胸がザワつく。
きっと長澤くんは純粋な気持ちを吐露しただけだ。
けど、私には何かを抱えた言葉に思えて仕方がなかった。
伝えるのは難しい。
長澤くんが持っているものは、ちゃんと私に伝わっているのだろうか。
私はしっかり理解してあげられているのだろうか。
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てきとーさん - チヨちゃぁん……チヨちゃんっ！幸せになってくれ… (2021年1月21日 7時) (
レス) id: 2e24d3a77d (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - みかげさん» わぁありがとうございます！！泣 チヨちゃん可愛いですよね！？(？) (2020年9月7日 23時) (レス) id: 439e2c470d (このIDを非表示/違反報告)
みかげ(プロフ) - 完結おめでとうございます……！！shp君……君イケメンすぎん！？ってかチヨちゃんかわ……チーノさん羨まし(殴)めちゃめちゃおもろかったです！！ありがとうございました！ (2020年9月7日 17時) (レス) id: 946825ef56 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - 粉みるく。さん» ちょっと見たいというコメを見たので、、、！ (2020年7月13日 23時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
粉みるく。(プロフ) - ば、番外編…w わーいチヨちゃんだぁぁぁぁ！ (2020年7月13日 23時) (レス) id: 091f5a802b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お茶
| 作成日時：2020年5月20日 1時
