箱庭の海６ ページ6
「あ、いた」
次の日の昼休み。
懲りずにE組に通っていた俺。
今日もいねぇだろうと思ったが、来てみるもんだ。
桜田は、窓側の席で頬杖をついて外を眺めていた。
他クラス進入禁止だが、構わずクラスに入る。
女子が俺を見て声を上げそうになったが、シーっと口元に人差し指を持っていけば、顔を赤らめ黙ってくれた。
余裕すぎ、女ってのは簡単でいいわ。
こいつを除いて。
イヤホンをし外を眺める奴は、俺が真後ろに立っていることに気づいていない。
肩を叩けば鬱陶しそうな表情で振り向き、俺の顔を見てさらに幻滅したようにため息をついた。
こ、こいつ…！！
「よ、よう桜田さん。今日はクラスにいるんすね」
笑顔を引きつらせながら、手を挙げ挨拶をする。
すると彼女は片方だけイヤホンを取り、下から睨むように俺を遇う。
「何ですか」
随分低い声で返事されたもんだぜ。
「他人行儀かよ。お前さ、ぜってー友達すくねぇだろ。てか現に言われてたしな」
桜田の前の席に腰を下ろし目線を合わせると、桜田はどうでもいいようにまた窓の外を眺める。
誰に言われてたとか気にしねーのな。
あまりにも無反応な桜田に嫌気がさし、ちょっと煽ってみたくなる。
「お前さ、少しは愛想よくしろよ。友達とかほしくねぇの？」
完全に無視だ。
「おい、聞いてんのかよ」
さすがにイラっときた俺は、桜田の頬を片手で掴み無理やり自分の方に向かせる。
教室中、「キャー！！」という女子の声が上がる。
…おい、顔赤くしろよ。
照れたりしねぇの？驚いたりしねぇの？
何だよその顔。
なんで、そんなに目が死んでんだ。
桜田は俺の目を見据えると、深く呑み込まれそうな瞳をさらに濃くし、口を開いた。
「私なんかに構ってもいい事なんかないよ。悪いこと言わないから、早くクラス戻りなよ」
なんだ、それ…。
手を離し、俺は立ち上がる。
もうすでに桜田はそっぽを向いていて。
これじゃ話になんねぇ。
そう思った俺は、言われた通り自分のクラスへと戻った。
席に着き、やつが言ったことを思い出す。
＿＿＿＿＿＿＿＿私に構ってもいい事なんかないよ
女ってもんは自分を守りたがる生き物だ。
けどあの言い方じゃ、俺をかばってるようじゃねぇか。
知りてぇ。
なんでそんなこと言ったのか。
あいつがどんなやつなのか、もっと…。
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作者名：お茶
| 作成日時：2019年4月10日 1時
