箱庭の海49 ページ49
帰りの電車に揺られ、Aと手を繋ぎながら身を寄せ合っていた。
窓から見える流れる景色をぼんやりと眺めながら、確かに隣にある体温を感じながら。
「最高のデートだった」
Aがそう囁いてきた。
夜遅く人が少ない電車なのに、気を遣い小声で話しかけてくる彼女が愛おしい。
「また行こうな。今度はどこがいい?」
「んー…今度は海」
「お、じゃあAの水着姿が拝めるってわけか」
「変態発言が絶えませんね」
「それ褒めてる?」
話しているうちにAの最寄り駅に着き、俺は一緒に降りた。
プラットホームから人は流れるように改札口へと向かう階段を上るが、俺達は近くのベンチに座る。
まだいたい、と。
言葉を交わさなくても、お互いがお互いを理解していた。
「銀時くんって、何好きなの?」
「甘いもん」
「他は?」
「んー…ジャンプ、金、堕落」
「それダメな人の典型的なやつじゃない?」
くだらない会話が出来るほど、気持ちに余裕がでてきた。
お互いに、だ。
それがなんだか嬉しく思う。
「Aが好きなもんは?」
「私はねー、強欲」
「は?何それ」
「強欲に生きてみたいから、強欲って言葉が好き」
似合わない言葉を連呼するA。
そう、似合わないはずなのに、何故かしっくりきた。
俺がお前に言いたいこと、伝わった証拠なのかね。
「そうそう、もっと欲を持ってこうぜ。俺に頼って、要求していいんだからな」
「してるんだけどなー。足りない?」
「ぜんっぜん足りねぇ。お前の欲は欲じゃねぇ」
「じゃあ…じゃあさ」
スっと立ち上がるA。
座っている俺の目の前に来ると、俺の両手を握った。
強く、大事そうに握るA。
スーッと息を吸うと、真っ直ぐと俺を見つめた。
「死ぬまで、私のそばにいること」
消えそうな声で、そうAは言った。
どうしようもない感情が溢れそうになる。
「いいじゃん、俺もそのお願いそっくり返すわ」
情けなく、俺の声は震えた。
まだ高校生のガキ二人が、永遠を知らないのに永遠を願う。
続いて欲しいと、膨らみ続ける二人の未来像を信じる。
____神様、どうかお願いします
ちっぽけな俺たちを、どうかずっと結んどいてください。
見失わないように、手を繋いどきます。
離れないように、抱きしめておくんで。
どうか、この人だけは
俺に守らせてください。
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時