箱庭の海43 ページ43
「けど、周囲の目はちょっと変わったかも。それは銀時くんもじゃない?」
「まぁな。お前といると男子からの目が痛てぇわ」
「私は女の子から…かな。けど、その…」
照れたように頬を赤く染めて、目をそらすA。
「ん?」と聞き返すと、目元を緩めた。
「友達が出来たの、女の子の。ほぼ銀時くんとの関係の話だけど、それでも友達になってほしいって言ってくれて…」
穏やかな表情で、とぎれとぎれ話すA。
「銀時くんがいなかったら、友達作れてなかったかも」
「そんな事ねーよ。Aと友達になりてぇやつなんて沢山いるんだぜ。Aが優しい空気纏うようになったから、話しかけやすくなったんだ」
そう伝えれば、首を横に振る。
「やっぱり、銀時くんのおかげだよ。その空気を纏えるようになったのは、銀時くんがいてくれたからだよ」
出会った当初からは考えられないような、優しい視線。
言葉数も増え、俺との距離はもうない。
正直、この一週間は天国だった。
浮かれまくっている自分に吐き気を催したくらいだ。
それくらい俺は、Aに惚れている。
好きだという感情がこんなにも愛おしく、苦しいものだと知る。
「…あの、よ」
「ん?」
「俺、Aのお義父さんに会ってみてぇ」
だから、こいつを守りたいと心の底から思う。
俺がお義父さん、と口に出すと、Aは分かりやすく目を伏せた。
一気に空気は変わり、居心地が悪い空間になる。
けど俺は、この問題を解決しない限り、Aを本当の意味で守れねぇと思った。
「会って話してみてぇんだ。Aの彼氏として」
無言で固まったAに、説得するよう後押しする。
「お母さんを傷つけないように、したい」
「…分かってる」
前の旦那を交通事故で亡くしたAの母親は、自分を責め鬱病になった。
変わり果てた姿はAにはどうすることも出来ず、一年ただそばにいることしか出来なかった。
その一年の幸せを取り返すように、その男が現れた。
今、Aの母親の一番の幸せは、きっとその男の存在だ。
母親の幸せを壊したくないというAの想いは、きっとそういうことを言ってるいるんだろう。
「一年、Aの母さんが再生しなかった一年。Aは精一杯、母さんに尽くしたんだよな」
「何しても無駄だったけど、ずっと」
「…今から行こうじゃねぇか、Aの家に」
「え…?」
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時