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箱庭の海42 ページ42

「もう一度信じて、いい?」


深い、海のような瞳が潤む。

目に涙をため、それがスーッと頬をつたった。


「…信じろ。俺しかAを守れねぇって証明する」


押し寄せてきた独占欲を殺すように、Aを抱きしめる。

彼女は俺の肩に顔を埋め、背中に手を回してくれた。


「好きだよ、銀時くん」


初めて呼ばれた名前。

憂いを含んだAの声は、容易く俺の心臓を掴んだ。

さらに強く抱き締め、俺は頷く。


「ぜってぇ離さねぇから」





俺とAが付き合っているのではないか、という噂は一気に広がった。

その噂は田村や沖田の耳にも入ったそうで、後日俺とAは二人に質問責めに遭った。

だか、二人はどこか諦めがついていた。

沖田に関しては、もう分かっていたかのような口調で、俺にAを託してくれた。


「彼女の家庭での問題は解決していない。全てを背負う覚悟で、Aと交際して欲しい。…こんな事、教員が言っていいことじゃないけどね」


最後に田村は俺にそう言った。

…その通りだ。

まだAの義父の問題は、解決していない。

俺はまだ会ったこともない男だ。

どう蹴りをつければいいか、正直分からない。

けど。


「好きって気持ちだけでどうにかなる問題じゃねぇってことくらい、ガキの俺でも分かります。けど、Aを護りたいんすよ。俺がそばにいてやりたい」


ハッキリそう宣言すると、二人は目を丸くした。

言葉通り、俺は本気だ。

それくらい、俺はAに惚れている。

同情なんかじゃない、本当にAを救いたい。

そう伝えれば、納得したように頷いてくれたのだった。


美波先輩はというと、全校生徒の前で俺に侮辱された事にショックを受けたのか知らんが、学校に来ていない。

周囲からの印象がさらに下がり、居ずらくなったんじゃないかと言われている。

親の力を使わず自ら身を引いたのが珍しく、俺は少し驚いているが。

俺やAに危害を加えず大人しくしているなら、もう眼中にも入れる必要は無いだろう。



「__くん、銀時くん」


Aの声が聞こえ、俺は目をゆっくりと開く。

何度か瞬きをし、合わなかった焦点を戻す。

いつの間にか図書室で居眠りしちまったぽいな。

ふぁぁっと大きく欠伸をし、起こしてくれた本人の頭に手を置き撫でる。


「俺の彼女一週間目、どんな感じ?」


「…何も変わらないよ、普段と」


素直にならねぇAの言葉に、笑ってしまう。

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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時

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