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箱庭の海35 ページ35

〜銀時side〜


体育祭当日。

異常な盛り上がりを見せる生徒と教員。

うちのクラスも普段から頭のネジがぶっとんだ連中なのに、さらにバカになっていた。

各それぞれの団旗が上がり、体育祭が始まろうとしている。


…あの日から、Aと話していない。

まともに顔を合わしていない。

どうしたらいいか、分からない。

そんな複雑な心境のまま、俺は全校生徒の中に紛れ並んでいた。


Aのクラスの列を横目で見る。

あいつは独特なオーラを放ち、さらにはこの学年のお姫様として注目を集めている。

だから、すぐ見つかった。


「…可愛いじゃん」


普段短くサラサラと流れていた髪を、女らしく編み込んでいた。

それは器用に、ほかの女子より綺麗に。

ボーっと校長の話を聞く彼女の瞳が、強い陽の光によってキラキラと輝いていた。


「どこ見てんだポンコツ」


俺の後ろに並んでいた土方が、グラウンドの砂を蹴り俺の足元にかけてきた。

イラッときて振り向き、親指を立て下にむける。


「なんでお前と同じクラスになっちまったんだろうな。ちげぇチームならボコボコにしてやったのによ」


「は?お前が俺を?ハッ、笑わすな。俺に勝つなんざ出来るわけねぇ」


「あのね土方くん、自信が無いからって強がっちゃダメだようんうん」


「んだとゴルァ!」


隣の列に並んでいた女子達がキャアッと声を出す。


「はーいそこ、静かにしなさーい」


全校生徒の前で校長に注意され、仕方なく前を向く。

ため息をついてふと視線を感じ、そっちを見る。

すると、Aが俺を見ていた。

目が合う。


空より深い、海の色をした瞳で俺を見つめる。


三秒。たった三秒、長い三秒間。

ハッとし、Aは目を逸らした。


「行くぞ」


肩を強く押され、俺も現実へと引き戻される。

押したのは土方で。

周りを見れば、全校生徒は自分の団の待機場所へと戻っていた。


俺も土方となぜか一緒になって戻ると、クラスの女子が騒いでいた。


「何かあったん?」


ブルーシートに腰を下ろし女子達に声をかける。


「あっ…あの、開会式が始まる前に、中庭でAさんの髪を田村先生が編み込んでたってこの子が見て…」


…は。

心臓の奥底がチクッと痛む。

なに、あれ自分でやったんじゃないんですか。

あの教師がやったんですか。


「田村先生って黄団だよな」


「そ、そうだけど…」


「ぶっ潰そうぜ」


一人でメラメラと燃える俺を見て、女子達は顔を引きつらせた。

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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時

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