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現われた動く屍を見ても三人は動じずじっくりとその体を眺めた
「オマエ、俺ヨリ強イ。」
屍は鎖を引きずりながらキョロキョロと見回した後三人の方に首を向けると間髪入れずに黒龍神に飛びかかった
横にいた神月と男、ルクは素早く飛び退いたが黒龍神は微笑んだまま
目の前まで迫った時
「光栄ですね。」
黒龍神がカンッと杖先を床に叩きつけると屍は音を立てて崩れ落ちた
歩み寄り片膝をついて相変わらず笑みを絶やさずに頬を撫でる
子をあやす母のように、囁く
「貴方を生んだのは私、貴方が従うべきは私の達。そして貴方の本能のまま、食い尽くしなさい、完成品No.12。」
***
真夜中
一日も休むこと無く狼は弟を探し続ける
薄々分かっていた、探しても手の届かない所にいるんだろうと
それでも体を動かさなければ不安が余計にじわりじわりと広がるだけだった
「テメェの面倒見てる暇なんてねぇんだよ。」
ログハウスに戻ってくるなり玄関先の階段に座る獣人を睨みつけた
疲労も溜まり隈は酷くなる一方
些細なことすらイライラする
「ロウくん、休みなよ。」
「黙れケン。出ていけ。」
「キミが優しいせいだよ。」
イヌの獣人、犬は親しげに狼を呼ぶが巻き尾はすっかり下がってしまっている
「もうすぐ戦争が始まる…でもオレ達、王様達は蛇を捕らえたいだけで人間は巻き込む必要ないでしょ？オレよりキミの方がずっと強いんだ、なんとかしてよ……！」
「黙れと言った。」
立ち上がる犬に狼は牙を見せ威嚇する
喉を締められたように息がしづらくなり犬は固まり怯えた
何も理由も無しに同胞を突き放す性ではない
「お前は国の掟を破ったにも関わらず人間に情を入れ込みすぎた。馬鹿だ。裏切り者と呼ばれて当然だろ。まだ繰り返すのか、もう何度目だ！」
犬を置いて狼は扉に手をかける
「待って！キミの弟を奪ったのは蛇でしょ？キミを支えたのは人間でしょ！？あの人達を巻き込みたくないとは思わないの？これはしちゃいけない戦争だ！！」
確かに蛇を捕らえる為に獣人は戦争に参加する
国の恥は国が片をつける、獅はそう言った
現在進行形で高校に通っている
豹と虎を含め孤児院にはとても世話になった
しかし狼は低い声ではっきりと答える
「獣と人は分かり合えない。」
閉じられた扉をただ見つめるしかできない犬にはそんなこと、とうに分かっていた
少しずつその日が近付いてくる
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作者名：灰猫 | 作成日時：2016年12月7日 5時
