8.祓魔の学舎 ページ11
働かざる者、食うべからず。
この国にはそんな諺があるのだと自慢気に話す悪魔の姿を思い出せば、手に持っていた白亜と石膏の練り物がパキリと砕けた。
ーーーー何故、俺がこんな事を。
正十字学園祓魔塾。
教壇に視線を向けるは皆、祓魔の道を志す少年少女であった。
ーーーーーーー
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「お待ちして居ました」
突然呼び出され、何かを企むような笑みを浮かべたメフィストに渡されたのは、見覚えのある黒服。
「…何だこれは」
「見て理解出来るでしょう。祓魔師の正装です」
「それは分かっている」
一体何をさせる心算なのかと睨み付ければ、丁寧な装飾を施された一冊の本を渡される。
それを一頁捲ると、そこには最近覚えたこの国の言語で【たのしいエクソシスト】と、まるで幼児絵本のような字がでかでかと印刷されていた。
「…これは?」
外見の荘厳さとは全く違う中身の幼稚さに唖然としていると、悪魔はしたり顔で言った。
「急遽アナタの為に特別に用意した、我が祓魔塾の講師マニュアルです」
「……」
何故そんな物を。などと考えてみるが導き出される答えは一つ。
「…やれと言うのか、俺に」
渡された本を睨み付けながら呪咀にも近い念を籠めて言えば、目の前の奴はその唇の端を軽く吊り上げた。
「何も、生徒たちに悪魔を殺す術を叩き込めと言っているのではありません。急な用事で休みを取られたある先生の代わりに、アナタには彼らに特別授業をして頂きたい。唯、それだけの事です」
「祓魔師でも無いのにか」
そんな事、祓魔師の講師たちが認めるとは思え無い。
「そう言えばそうでしたねえ……フム…では、私が直々に招いた特別講師とでも言って置きましょう。ああ、それが良い」
「………」
それでいいのか正十字騎士団。
「たまには良いでしょう?アナタは今、祓魔師の血で生きている。その貢献くらいはして頂かなければ…ね」
嫌味な奴だ。
苛立つ胸の内を抑えて渡された服に腕を通せば、やはり似合わないと笑われた。
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「今日この時間に限りお前たちに授業をする。どうせこの一度のみだ、俺の名は知らずとも結構だろう」
粉々に砕けて書く事が出来無くなったそれを黒板の端に置き、新しく出してある物を書く。
そういえば、百年前はチョークと言えば当たり前に白亜のみの事であったが、今は違うらしい。随分と感慨深い物だ。
「何か質問は?」
砕かれたチョークを見ていたらしい生徒たちは大きく肩を揺らして目を反らす。
これでは質問など無いだろう。
そう思い、黒板に向き直ろうとした時だった。
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碧石杜@奈良定(プロフ) - ありがとうございます。 (2017年2月5日 10時) (レス) id: 99d14ccf5f (このIDを非表示/違反報告)
Dhian(プロフ) - 凄くカッコイイ話です。続き楽しみにしてます (2017年2月5日 9時) (レス) id: d3419f40dd (このIDを非表示/違反報告)
碧石杜@奈良定(プロフ) - やまださん» ありがとうございます (2017年2月2日 20時) (レス) id: 99d14ccf5f (このIDを非表示/違反報告)
やまだ - 更新頑張って下さい! (2017年2月2日 19時) (レス) id: c225b78ce7 (このIDを非表示/違反報告)
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