四話、いない ページ12
「有栖先輩いますか!?」
「あ、翔琉くん…どうしたの?」
「インストルメント…が、楽器がいなくなっちゃって…!」
「へー、大変…だ ね…」
インストルメントがいなくなったってどういうこと?!
それって真面目に大変じゃん
適当に返事したけど大変じゃん!
「よし、探しに行こっか!」
「ありがとうございます…!」
インストルメントが何処かに行ってしまった
それは一大事だ
私はまだルーチェと出会って間も無いけど、
翔琉くんは長く一緒にいるから心配するのも無理ないと思う
「俺、彼奴が…スプロが本当は嫌いだったんです」
走って探しているときに翔琉くんが言った
「スプロはおじいちゃんのオーボエから生まれたんだ
おじいちゃんはもういない。
その代わりスプロが居た…昔から楽器が苦手だった
スプロが憎かった。おじいちゃんが大事にしていたスプロが憎かった。
インストルメントなんて知ってる人いないじゃんか
でもさ、オーケストラ部に希望をもった
そこで初めてインストルメントと仲良くやっている有栖先輩が
どうしようもなく羨ましかった
スプロは生意気で、力もろくに貸してくれなくてそんで…」
ポツポツ…と、雨が降ってきた
学校から抜け出してしまったなぁ
傘もないため雨宿りをする
「スプロは俺にすごい優しかったんだ
それを俺は嫌った。俺は嫌いなのに優しくしてくれてるんだ」
翔琉くんはそれだけ行って黙った
唇が震えてる
鼻をすすっている…泣いてるんだなって
可哀想だけれど、私は寄り添うしかなかった
「ほら、雨止んだよ探そっか…」
「…はい」
「落ち込んだって意味ないの!
翔琉くん、今はスプロが好きってことでいいんでしょ
ならそれでいいじゃん」
また走り出した
最後に辿り着いたのは、公園だった
全然スプロがいない
「やっぱ、俺に楽器って向いてないのかな」
「私は翔琉くんの演奏好きだけどね」
「そうですか…」
「もう、見つからないのかな」なんて呟く翔琉くん
大丈夫だと思うんだけどな…
本当に、この日スプロは見つからなかった
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作者名:まろちゃん | 作成日時:2021年6月17日 15時