報せの記憶 ページ12
「Aはお前を信頼している。そして、それを素直に口にしている。だから、お前も素直になったらどうだ？せめてこいつの前では…」
世「…ッ！」
その言葉に、『あの時』の記憶が呼び起こされる。
貴『素直になれよ！せめて俺の前では…』
世「……ぁぁ」
歯を食いしばり、消え入りそうな弱い声でなんとか頷く。持っていたノートを力一杯抱きしめて、その腕は僅かに震えてしまう。
キティさんには背を向けている状態だったので僕のそんな様子は死角になっていて見えていない。僕自身、知り合いにそんな状態を見られたくなくてすぐさま立ち上がり、治療室から去ろうとする。だが、すれ違いざまにキティさんは怪訝な顔で僕を呼び止めた。
「おい…どこへ行くんだ？」
世「帰るんだよ。あまり遅いとママも心配するし…」
「ちょっと待て…用が済んだら帰って良いと言ったのは俺だが、こんな時なんだ。せめてAが目を覚ますまで…」
呆れ返って、いつもよりも声を低くして制止するキティさんに振り向くこともせず、僕は今言える精一杯の本音を口にした。
世「Aの為に出来る事が…まだあったんだ……」
キティさんの声はそれっきり聞こえてこなかった。僕は黙ってそのまま治療室を出ると、いつもよりも足早に、力一杯踏みしめて、確固たる決意を持って脚を前へ前へと踏み込んでいく。
世(A……お前は信頼に答えようとしてくれた。僕らの道を切り開く事で。…だったら、僕はお前の言葉が正しいと証明することでお前の信頼に応えるよ。日本に戻れば今の状況を打開出来る。それを、お前の代わりに僕が証明してみせる！)
外に出ると、心地いい夜風が頬をくすぐる。辺りはすっかり暗くなっていたが、珍しく空には星がいくつも輝きを放っている。
バイクに跨り、そんな夜の街を駆け抜ける中、僕は『あの時』の…秀兄が死んだと言う報せを受けた後のAとのやり取りを思い出していた。
貴『真純、我慢したってしょうがないよ。』
世『…何の話？』
貴『秀兄の事に決まってんだろ。泣きたい気持ちを抑えてるのが丸分かりなんだって。泣きたい時は泣くのが普通だろ？意地張ってんじゃねえよ。』
世『…ッ！お前には関係ない！ほっといてくれ！』
貴『ほっとけるか馬鹿！関係ないならメアリーさんだってわざわざ俺に秀兄のことを伝えたりしないだろ。…本当に辛い時は泣けばいいんだ！意地張らずに素直になれよ！何年の付き合いだと思ってる？せめて俺の前では…』
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ヒロ(プロフ) - 続きが滅茶苦茶気になります。更新楽しみに待ってます (2020年4月27日 18時) (
レス) id: 0b6c256cc4 (このIDを非表示/違反報告)
vile - 真純が日本へ発つ覚悟を決めた！原作知識で２人で来日するのは分かってますが、サイドストーリー的な感じで、続きがメチャメチャ気になります!!更新を楽しみにしてます♪ (2018年6月23日 13時) (携帯から) (レス) id: 66be3b6d69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：矢代ゆうま | 作成日時：2018年4月27日 3時
