◆PROLOGUE−４１◆side 続き ページ46
ベル君はもしかすれば、背後から人に触れられること自体がダメなのかもしれなかった。
その考えに至った経緯は次の通りである。
一つ、私は彼に話しかけようとした際に背後から近寄った。
あの時のベル君は私が口を開くより先に椅子を回転させ、正面から私に向き合ったのだ。
話す時は相手を見て話す、なんて根本的なマナーがそこで話に出てこないのは彼が、本を顔に乗せたまま会話を続けたせい。
あれは単純に、私に背後を取られないようにするための行動だったのだと説明がつく。
二つ、背中に触れた瞬間に飛び起きた。
もうこれが直接の原因だとしか思えない。
今だってほら...必死に壁に背中を押し付けて、逃げ場を失った子猫のように身体を震わせているのだし。
...後ろから襟を掴んだ時に露骨な反応はなかった。
意識があったから？それとも、ピンポイントで背中だけが《その範囲》なのか。
《そう》なったことに何か理由があるのか、頭の中では疑問ばかりが入り混じる。
彼に直接質問しないことには詳しいことはわからない、が。
何故、触れられるという当たり前の行為に恐怖心を持つに至ったのか...
この年頃の男子生徒なら......ああ、いや。
......そう言えば、友人は作ったことがないと言っていたんだったか。
今までこの問題にぶつからずに過ごしてきたせいで、気づかずにいたのだろう。
大勢の人間に囲まれて生活する、その難しさに。
日常生活で困ることがなければいいが...と彼の学園生活を懸念しながら、今度は名前を呼びつつゆっくりと手を伸ばしてみる。
そうっと...壊れ物に触れるように頬に触れた。
念のため、爪は外してある。暴れた際に傷付けぬように。
ほっと肩の力を抜いたのが見えて、もう大丈夫だと安心した。
漸く向けてくれた両眼から零れる涙を指先で拭いつつ、(困った生徒だ)と気疲れを誤魔化すように微笑んで見せる。
入学式初日からこんなにも私を振り回す問題児は、後にも先にもこれっきりだと助かるんですけどねぇ。
未だに細かく身体を震わす彼を、安心なさいとこの胸に閉じ込めた。
怯えさせないよう、壊さないよう、ゆっくりゆっくりとその背を撫でて落ち着かせていく。
閉じた瞼の裏に浮かぶ、何故か鮮烈に焼き付いて離れることのない二つの目。
......桃色の瞳が、涙で潤んできらきらと月明かりを反射している様は実に美しかった。
◆PROLOGUE−４２◆→←◆PROLOGUE−４０◆sideディア・クロウリー
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 633人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨水(プロフ) - だれかさんさん» コメントありがとうございます〜！！今後様々な事件が起きるにつれてマブ達との絆も深まってまいります！もっと面白く読めるよう尽力してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします〜〜！ (2021年12月12日 1時) (
レス) id: c39e48623f (このIDを非表示/違反報告)
だれかさん - おもろくてすきです (2021年12月12日 1時) (レス) @page47 id: e7b132919e (このIDを非表示/違反報告)
雨水(プロフ) - kanameさん» ありがとうございますwww今後もギャグパート、それ以外でも面白いと思って頂けるように頑張ります！！ (2021年12月6日 15時) (レス) id: c39e48623f (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - 唐突に｢我がナ〇スの科学力はぁああ！｣のやつ出てきて吹き出しましたｗｗｗテンポ神すぎて笑いこらえれないｗｗｗ最高ですｗｗｗ (2021年12月6日 5時) (レス) @page18 id: 7565f8d7cb (このIDを非表示/違反報告)
雨水(プロフ) - フランとベルさん» 大正解です！本来の台詞を一部変更し、エドに叫ばせてみましたw (2021年11月4日 13時) (レス) id: c39e48623f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨水
| 作者ホームページ：http://hibiki
作成日時：2020年12月4日 2時
