＊ＰＲＯＬＯＧＵＥ＊ ページ1
♠♥♣♦
今でも時々、桃原鈴という人間の人生を夢想する。
人と関わることに消極的で、卑屈な性格だった私。そんな私が自分を誇れることと言えばそれは、人々から天才と称され持て囃されたピアノの腕ということになるのだろう。
かの有名なショパンやベートーヴェンの時代が再来したかのように人々に持ち上げられ、最初は私も悪い気はしていなかったように思う。
私は凄いんだと、人よりも優れているのだと信じていたかったのだ。
きっと......何も持っていない自分を肯定するために必要な、最後の自尊心だったから。
元々は感受性が強く、人の言葉を鵜呑みにしてしまう素直な性格だった。
親に言われて始めたピアノ。うまく弾ければ褒めてもらえるのが嬉しくて、続けていくうちにいつしか、手放すことなど考えられないくらいに自分の中で大きな存在になっていた。
学校で嫌なことがあっても、家に帰ってピアノに触れば自然と心が落ち着いた。
夜には時々ブランケットを引っ張ってきて、ピアノの下に潜り込んで眠る。
翌日になってそれに気がつき叱っても、また別の日には同じことを繰り返すからと両親もいつしか諦めるようになった。
...誰もが認めたピアノの天才。
そんな私に、心境の変化があったのは高校に入学してすぐのこと。
『もう、ピアノは弾きたくない』
何ヶ月も悩んで、決意した正直な自分の気持ちを伝えた時の両親の表情。
失望したって顔だった。
心苦しかったのは、確か。
『...でももう、弾いても楽しくない』
決して裕福な家庭ではないのに、コンクールの衣装やら海外渡航やらと大きな出費が重なって、その度に親戚中に頭を下げて回っていたことも知っている。
私のために今までどれだけお金をかけてくれてたのかなんて、わざわざ怒鳴り声で説明されなくても分かっていたし、だからこそ口にするのに相当な勇気がいった。
......分かってくれるだろうなんて、期待した私が甘く、愚かだったのだろうか。
・
(雨、降りそうだな...)
駅のホームで、私は一人どんよりとした灰色の空を見上げていた。
雨が降ったら濡れた制服で一日過ごさなければならない、それは嫌だと急かすように身を乗り出すも、時刻通りに動く電車の到着が早まるわけではない。
ただ、カバンの中には次のコンクール用にと練習している曲の楽譜が入っている。
濡れると大変だ。
朝、上階から降りる足音に驚いて掴み損ねた傘が今、ここにあればよかったのに。
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雨水(プロフ) - だれかさんさん» コメントありがとうございます〜！！今後様々な事件が起きるにつれてマブ達との絆も深まってまいります！もっと面白く読めるよう尽力してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします〜〜！ (2021年12月12日 1時) (
レス) id: c39e48623f (このIDを非表示/違反報告)
だれかさん - おもろくてすきです (2021年12月12日 1時) (レス) @page47 id: e7b132919e (このIDを非表示/違反報告)
雨水(プロフ) - kanameさん» ありがとうございますwww今後もギャグパート、それ以外でも面白いと思って頂けるように頑張ります！！ (2021年12月6日 15時) (レス) id: c39e48623f (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - 唐突に｢我がナ〇スの科学力はぁああ！｣のやつ出てきて吹き出しましたｗｗｗテンポ神すぎて笑いこらえれないｗｗｗ最高ですｗｗｗ (2021年12月6日 5時) (レス) @page18 id: 7565f8d7cb (このIDを非表示/違反報告)
雨水(プロフ) - フランとベルさん» 大正解です！本来の台詞を一部変更し、エドに叫ばせてみましたw (2021年11月4日 13時) (レス) id: c39e48623f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨水
| 作者ホームページ：http://hibiki
作成日時：2020年12月4日 2時
