補色れんしゅう帳。（in×ar短編集）

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「まぁ、いいや…。

でねでね、光がね。」



まだまだ続く、光ちゃんトーク。

しっかりと聴かなきゃ！！軽い幼馴染の初めての真剣な恋だもの。


「今日なんて、やけにカバンが重そうだったから
　『何入ってんの？』ってきいたらダンベル入ってるって言うんだよ。
　ちょー可愛くない？？」



なんだ…そのエピソード…。

全く可愛くない。

ダンベルを持ち歩く、JK…。

…可愛くねー。




はっ…！？
いけないいけない。



友人の好きな子を可愛くないだなんて思ってしまった…。

きっと、少し変なだけだ。



「へ〜。ちょっと変わった子なんだね。」

「そう。光はね、ちょっと天然でおバカさんなんだけど、いつも一所懸命でそこが可愛いの。」




おれだって、おバカだし。

おれだって、いつでも一生懸命だし。



むくむくとなぜか湧き出て来る対抗心に自然と唇が尖る。



おれだって、おれだって。



おれだって…

…可愛い？？





んなわけがない…。

そもそもおれは、男だ。
いのちゃんの好きな光ちゃんと違って、おれは男なのだ。



だから、おれが可愛いってこと…あるわけない。

そんなわけ、あるわけないのだ。



その当たり前の事実に、なぜかまた悲しくなって、いのちゃんの話が耳に入ってこない。



当たり前のはずのことが、今当たり前のように押し寄せてきて。
なんだか、目の前まで暗くなっていってる気がする。



いのちゃんの声も聞こえなくなって。

いのちゃんの空気も温度も感じられなくなって。



このまま、どんどん離れて行っちゃうのかな。



目の前がまっくらになったまま、
固まって動けない体に、突如”ちゅっ”っと聞こえた音と。
あったかい柔らかい何かが唇にあたる感触。




ぱっと目の前が色を取り戻し、にっこりと笑ういのちゃんと目があった。



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