補色れんしゅう帳。（in×ar短編集）

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「だからね、その時の光がちょー可愛いかったの♡」



嬉しそうに話し出したのは、今日の恋のお相手か。

あれ？光って、昨日も言ってなかったっけ？？



「へ〜。ちゃん、その子、気に入ってんだね。」
「気に入ってるってんなんだよ、光のことはこの一週間ずーっと可愛いって言ってたじゃん！！」



おおぉ…。いのちゃんに本命が…。
いつかはこんな日が来るとは思っていたけれど、とうとう。

好きな子が１番目から５番目までいた小学生時代とはやはり違うのか。



「でね、でね、光がね。」


嬉しそうに続く『光ちゃんトーク』に思わずスマフォを触る手を止めた。


今まで見たこともないようないのちゃんのほころんだ顔。

本当の恋をすると、人はこんなにも幸せそうな顔をするのだろうか。



俺だけがその『恋』というものをまだ知らず、
いのちゃんに置いていかれた寂しさからか
胸の奥がちくんと痛んだ。




あぁ、そのうち告白なんてするのかな。

その子と付き合っちゃったりするのかな。


そんで、手を繋いだりとか。

レモンの味のするキスをしたりだとか。


もっといって、抱き合っちゃったりするのかな。


そしてそして、いのちゃんは。
おれを置いて、一人先に光ちゃんと一緒に大人になるのかな。




まだ見たことはないけれど、光ちゃんはきっと可愛いのだろう。

そんな光ちゃんといのちゃんのこれからの初々しいお付き合い。
ぐるぐると回る知識の少ない中での頭の中の想像。いや、妄想。


いのちゃんが遠くなってしまう。
どうしよう…なんだか、泣いてしまいそう。




「大ちゃんってば！！」

肩を揺らされて、ぼーっとした意識を戻しいのちゃんの方を向くと
びっくりほど顔と顔が近づいてた。



「どうしたの？」

目の前にある、心配そうな大きな瞳に吸い込まれそう。
視線を落とすと、そこにはぽってりとしたいのちゃんの美味しそうな唇があった。




今なら、光ちゃんより先にキスができるかな…。
そしたら、恐らくそれがいのちゃんのファーストキス(有岡調べ)。



あぁ！！なんて、ダメだダメだ！！





寂しさからの独占欲で、大切な友人の大事な初めてを奪おうとしちゃうなんて。
ブンブンと首を振り、目の前の大切な友人を見つめた。



「なんでもないよ。」

にっこりと、ご近所の奥様に大好評の大ちゃんスマイルを送ると
いのちゃんは目を細めて、なんだかちょっとニヒルに笑った。



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