補色れんしゅう帳。（in×ar短編集）

『息するように恋をする』 ページ7

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６年前。

隣の家に引っ越してきた一つ年上のいのちゃんは
それはもうとてもとても綺麗な顔をしていた。


栗色の長めの髪に、ぱっちりでタレ目のおめめ。

まっすぐ通った鼻筋。


小学生にして『綺麗な顔立ち』っていうのはこういうことを言うのだと
鼻を垂らしながら思ったものだ。


「仲良くしてあげてね。」
っといのちゃんちのおばちゃんに優しく言われたものだから、
おれはこの６年間、毎日と言っていいほどいのちゃんと遊んだ。

そこで知ったいのちゃんの本性は、第一印象とは真逆だ。



儚い印象を植え付けたあの真っ白な肌は、ただの遺伝。

ちょっとだけ俺よりも運動が苦手だけど元気そのもの健康優良児。

焼けても赤くなって腫れちゃうから極力焼けないようにしてただけだ。



おばちゃんの後ろに隠れて俺を見ていた姿は幻だったのかと思うほど
いまはグイグイ俺を遊びにへとどこでもいつでも引っ張って行くし、
そこで出会った老若男女問わずだれでもかれでも話しかけていつも間にか仲良くなる。

いのちゃんはあっという間にみんなの近所の人気者になった。
(俺の次にだけど。)



そんな、いのちゃんは惚れっぽい。

毎日出会う誰かに恋をする。



やれ２組のヨーコちゃんが教科書貸してくれた優しいとか、
一個下のミクちゃんが子猫みたいで可愛いとか、
水泳教室のまりこ先生が巨乳だとか、
コンビニバイトの大学生高橋さんの真面目なメガネ姿が逆にエ ロいとか。


一個下の俺にはわからない基準も中にはありつつも、
毎日毎日飽きもせず、恋をする。

そしてその度に、色んな相手の良さを俺に一生懸命語るもんだから、
1日の終わりに『へ〜』っと適当な相槌を打ちながら聞くのが俺の日課になっていた。





「ねぇ、大ちゃん？聞いてる？？」
「聞いてる、聞いてる。」

いのちゃんが中学校に上がってからも、高校生になってからも
俺はこうやって夕方から母ちゃんが『帰ってきなさい！！』っと隣の家から怒鳴り声をかけるまで
決まっていのちゃんの部屋で過ごしていた。

何をするかって言うのはバラバラで、宿題をしたり、漫画読んだり、ゲームをしたり。
最近は買ってもらったばかりのスマフォでゲームばかり。



「もう！！またゲーム？？聞いてよ俺の話！！」
「だから聞いてるってば！！」

聞いている…ふりもばれているようだ。
長年の付き合いって怖いな。

でも今は、いのちゃんの軽い恋愛話より、新しいゲームの方が大事なのだ。



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