補色れんしゅう帳。（in×ar短編集）

＊ ページ17

＊


『好き』。


その言葉が、俺には腑に落ちずに、魚の小骨みたいに胸をチクリと指す。



好きだよ。大好き。

けれど、それだけじゃない。

俺の大ちゃんへの想いはそれだけではすまされない。



他人はこれを『恋』と呼ぶのかもしれない。
でも、俺にとってはそれも違う気がする。

どこからともなく、或る日突然ぽっと現れて
或る日突然ぱっと終わってしまうような、そんな感情ではないのだ。



別の人はこれを『愛』というのかもしれない。
でもでも、それもしっくりこない。

だって、俺はメンバー全員に愛を持っているし、
なんならスタッフさんにだってファンにだって、なんだって愛を持つ博愛主義者だ。


そういう、こっち発信のものではないんだよ、大ちゃんへのこの想いは。


「どうしたの、ちゃん？難しい顔して。」
「ふぇ？」


撮影を一足先に終え、不思議そうに俺の顔を覗き見る大ちゃんに
答えを返そうと思ったのに、
俺の返事なんかまるで興味ないみたいに携帯を取り出しゲームを始め出した。


じぶんで聞いて来たくせに。

いつでもどこでも、俺に対しては結構自分勝手。
やっぱりだいちゃんは太陽なんかじゃない。

でも、隣にいるだけで不思議と俺の心はあったかくなる。



「何でもないよ。」

俺の答えに興味なさげに「そう。」っとだけ答え目線は合わせてはくれないけれど。
それでもなんでだか許せてしまう。

さて、この感情をなんて呼ぼう。
この関係を何と名付ければよいのだろう。




「ねぇ、大ちゃん。」
「ん？？」
「大ちゃんにとって、俺は何？？」


突然のよくわからない質問にも、それでも大ちゃんは俺に視線を向けることなく
携帯を見つめたまま、ふんっ、っと「何当たり前のこと聞いてくるんだよ」っと言わんばかりの笑いを鼻で鳴らした。



「そんなの決まってんじゃん。」
「決まってんの？？…なになに？？」


少しだけ怖いけれども、その答えの続きが知りたくて。
こっちの本音を悟られないようにふざけた声で急かせば、
前髪を通してだけれど、やっと、目を合わせてくれた。


にっこりと微笑んだその瞳は、何でもお見通しって顔で。
口元は、言っちゃってもいいの？っと言わんばかりにヒクヒクと嬉しそうに動いた。

含みをもたせたその顔は、腹立たしいほどに可愛らしい。





「ちゃんはね、

　俺にとって、ーーーー。」









その答えは、


君という”光”。




＊


19/02/10 Twitter記載より。
(加筆訂正箇所あり)

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