補色れんしゅう帳。（in×ar短編集）

＊ ページ13

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アイスといのちゃんに気を取られている間に
気づけば、風がぐるぐると回り出してた。



「何かの前触れなのかもね〜。」

不気味ないのちゃんの言葉に不安になった。



不吉な何かの前触れ？？
明日からはテスト期間…縁起でもない！！

こうはしてられない！！勉強しなくちゃ！！
まだ本降りになっていない空を見上げて今ならいけると提案するもあっけなく却下された。



「俺、まだアイス食べてるもん。」

それなら俺も食べてるよ！！
早く食べてしまわなければ。

焦りだし、舐めるのをやめ、ソフトクリームをかぶりつき始めた俺をみて、いのちゃんはまた笑った。



「お腹冷えるよ〜。」とか、「歯が、き〜んてなるよー。」とか。
いろいろいってたけど、
俺は、もう！！急いで食べなきゃ帰れないじゃんか！！って思ってて。


やっとの事で平らげて、横を向くといのちゃんはまだ、アイス片手に笑ったまんまだった。




「早く食べないと、溶けちゃうよ。」

垂れそうになっているブルーの棒アイス。
俺の言葉に、「はいはい。」っと言いつつも、じっくりと味わうようにゆっくりと食べる。


やれやれと思いながら、空の様子を伺おうと顔を上げると、



ズドン！！


っと、大きな雷鳴。




思わず。「ひっ!!」っといのちゃんの右側にくっついてた。





パラ…バラバラバラバラ…。

大きな雨粒とともに、高架にそれが当たって頭上で響く。
伏せていた顔を上げ、また空を見上げると、真っ黒な雲がゆらゆらと不気味に揺らいでて。


「やっべ〜。まじ、ゴロゴロ言ってんじゃん。」

いのちゃんの方を向きなおしてそう言った。
笑いながら。



だって、さっきびっくりしていのちゃんにくっついたことをまたからかわれると思ったから。
わざと、おどけて言ったんだ。それなのに。


まっすぐないのちゃんの瞳と視線がかちあった。


澄んでて。キラキラしてて。
油断すると、吸い込まれそうなほどで。




「ねぇ、大ちゃん…俺、」


ピカって辺りが光った。
いのちゃんが言いかけた言葉を遮るかのように、稲光の少し後に雷鳴が轟く。

いのちゃんの表情は逆光でよくわからない。


「えっ？何？？聞こえない。」

顔を近づけ、なんとか聞き取ろうとしているのに
雨脚も強くなって、音がより響くから、よけいに聞こえなくて。




「俺、ずっと、…、で、」

近くにいるのに、途切れ途切れに聞こえる声。


「えっ？」

もどかしくて自分から、もっともっとっと近づいた距離。



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