検索窓
今日:17 hit、昨日:0 hit、合計:71,331 hit

episode,73 ページ26

何でこんなにモヤモヤするの?
今までは嫌いだって言っても傷ついた事はなかった。
なのに分かった瞬間に彼の「嫌い」が胸に刺さる。


「嫌い・・・嘘吐いた君が嫌い」


目の前の彼は困ったように笑う。


「また笑って誤魔化すの?そういう所も嫌い」


涙は溢れ続ける。
何度拭っても零れてしまう。


「嫌いなのにっ、気に食わないのに、何でこんなに痛いの・・?分からないよ・・・」


「・・・俺は知っている。何でそんなに痛いのか」


彼は優しく私の頭を撫でる。
空いている片方の手でそっと涙を拭ってくれた。


「好きな奴に嫌いって言い聞かせるから、痛いんだよ。苦しいんだよ」


彼が悲しそうに笑う。
私は彼に今までなんて事を言い続けたんだろう。
それに私は自分に嘘を吐いていた事を認める。
心の何処かではコイツの事を好きになっていた。
けど、それを隠す為に嫌いと言い続けた。
会った当初から。気に食わない程、優しい彼の笑顔に惹かれた事を誤魔化すために。
私は彼に思いっきり抱き着いた。


「ごめんね、本当は心の何処かでは惹かれていたの。アナタの笑顔に。アナタの優しさに」


彼は無言で私の背中をさする。



「嫌いって言ってごめんなさい。傷つけてごめんなさい。私」


「俺は、どんなAでも好きだよ。西宮の時でも、新藤でも、コニャックでも。
 好きだけど、そんな事言ったら遠ざかるだろ?だから言わなかった、ずっと」


私は彼の言う事に耳を傾ける。
彼の表情は抱きしめているため、分からない。


「あの時から今まで、Aの事しか好きになった事がない。強くて優しいAが好きだ。こうやって俺の為に涙流す君も好き」


「嬉しいな、そうやって言ってくれて。私もアナタに会えるのを楽しみにしてた。
 ずっと別れた時から探していた。まさか、こんな形で再会するなんて思わなかったけど」


いつの間にか涙は止まっていた。


「まさか、胡散臭い笑顔浮かべるペテン師があの男の子だと思わなかったけどね」


彼から離れて、笑顔で彼を見る。
嫌いだった笑顔はいつの間にか好きになっていたけど、気づかないフリをしていた。


「嫌っているフリをしてごめん。私はアナタの事いつの間にか好きになっていました」


「俺はもとから好きだ、Aの事。だから俺と恋人になってくれないか?」


私は縦に頷いた。
すると彼は思いっきり飛びついて、私を強く抱きしめる。
そして私の頬にキスをした。

episode,74→←episode,72



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (79 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
369人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

rekuiemu(プロフ) - 悠さん» コメントありがとうございます!これからも応援して下さると嬉しいです!! (2018年6月10日 10時) (レス) id: 1957aa9c34 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すごい面白いですね!これからも頑張ってください! (2018年6月3日 0時) (レス) id: 3f15d9f557 (このIDを非表示/違反報告)
rekuiemu(プロフ) - 明里香さん» コメントありがとうございます!見つけて下さりありがとうございます!申し訳ありません。不甲斐ない作者ですがこれからも応援して下さると嬉しいです。 (2018年5月10日 22時) (レス) id: 1957aa9c34 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 誤字がありました。「もっ遠く」ではなく、「もっと遠く」です。 (2018年5月10日 8時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:rekuiemu | 作成日時:2018年5月4日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。