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「お前、キャバレーで働いたことあるんか?」
先程まで黙って話を聞いていた真島が口を開いたことで、少女は頭を上げた。
『……ないです』
緩く左右に頭を振ると、真島は小さな溜息を一つつく。
「あんな、この世界は楽に稼げる訳ちゃうで。客の心を掴む技術が必要や。それはすぐに身に付くもんやない。長年の経験が物を言うねん」
『…………はい』
「お前が百万稼ぐんなら、三年……いや、五年はかかる。それでもここで働きたい思うか?」
『……』
真島の言うことは最もだった。
キャバレーのいろはを知らない彼女が、すぐに大金を稼げる程優しい世界ではない。
自分の甘すぎる考えに気づいた少女の心には、諦めが立ち込めていた。
少女を見つめる真島と、俯いて床一点を見つめる少女。
秒針が鳴り響く程静かになった室内で、最初に口を開いたのは真島の方だった。
「……お前、さっき"何でもする"言うたよな?」
『……はい、言いました』
てっきり諦めて帰るしかないと思っていた少女は、真島の質問に疑問を感じながらも答える。
暫く何かを考え込むような仕草を見せる真島。
少女は次の言葉を大人しく待った。
「……二ヶ月や」
『えっ?』
「二ヶ月間、お前には俺の言うこと全部聞いてもらう。そしたら約束の百万くれてやるわ。……どないする?やるか?」
『……!やります!やらせてください!』
彼女の目が再び決意の色に染まった。
もう後がない彼女にとって、こんな好条件を受けない選択肢はない。
やるしか、ないのだ。
「そうか……ほんなら、今日から───────」
「お前は俺の"犬"や」
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なぬ - 面白い (2022年3月29日 16時) (レス) id: 9f70a28778 (このIDを非表示/違反報告)
kokurou6(プロフ) - Twitterフォローさせていただきました。よろしければ承認お願いします。 (2021年2月7日 16時) (レス) id: f57eb3d90a (このIDを非表示/違反報告)
★レイナ☆(プロフ) - ツイッターフォロー申請させて頂きました! (2021年2月4日 11時) (レス) id: 62f57f1f40 (このIDを非表示/違反報告)
エコノハァー(プロフ) - 雲雀さん» はい、やべぇ所の作者です…。ハチャメチャな作品を読んでいただいて光栄です!ありがとうございますっ!(土下座) (2021年1月23日 13時) (レス) id: 0f751f239f (このIDを非表示/違反報告)
雲雀(プロフ) - エコノハァーさん» コメントありがとうございます〜!嬉しいです〜!あの、もしかして、「就職した先はやべぇ所でした」の作者様でいらっしゃいますか……?私もエコノハァーさんの作品楽しく読ませていただいております!! (2021年1月22日 23時) (レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雲雀 | 作成日時:2020年12月27日 14時