漂流 ページ1
ハミングが聴こえる。
とても透明で、美しくて。
でもどこか哀しい声がする。
石畳の階段を上がって、この宝石みたいな夜景が観える塔の手すり。
腰掛けてた後ろ姿のあなたはとても小さく見えた。
多くの人に望まれているのに、誰からも待ち焦がれているのに。
行き場がないメロディ。
そっか。
あの頃、あなたは。
ずっと『ココ』で歌いたかったんだね。
ーーーー
ーーー
ユリ「荷物、ここでいいー？」
大きな声で呼び掛けると、腰に手を当ててグルっと部屋を見渡した。
ユリ「なんだって、またこんな辺鄙な場所に・・・」
A「住めば都って言うじゃない。笑」
私は笑いながら、買ってきたペットボトルを差し出す。
ユリ「ありがと。」
A「こちらこそ。
休みの日にまで手伝ってもらっちゃって。」
ユリ「なに水くさいこと言ってんのよ。」
小さなデザイン会社でデザイナーをしている私と、その親友・ユリ。
今日は私の引越しの日。
ユリ「私の家の近くに越して来たら良かったじゃない。」
A「・・・ソウルから。
ちょっと離れたかったから。」
ユリ「職場は結局ソウルなのに？
・・・・ねぇ。
無理してない？
無理に忘れようとしなくても・・・」
A「大丈夫。ちょっと、現実逃避してるだけだから。」
冷蔵庫もまだ無くて、生ぬるいままのペットボトルの水を無理やり喉に流し込んだ。
彼と住んでいた２LDKのソウルにあったマンション。
解約して、荷物はほとんど彼の実家に預けてきた。
一人の身には、このワンルームでちょうどいい。
ユリ「時間が解決してくれるよ、すべて。」
呟くように言ったユリの言葉が、救いのようで絶望だった。
この部屋の狭さが落ち着く。
狭い空間にじっと居さえすれば
広いどこか知らない場所に、
自分が漂流していく心配がないから。
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なお(プロフ) - 環琉さん» こちらこそ、読んで頂きありがとうございました！ (2018年9月25日 21時) (
レス) id: 460cbb2093 (このIDを非表示/違反報告)
環琉(プロフ) - なおさんこんにちは。いつも素敵なお話ありがとうございます。 (2018年9月16日 11時) (レス) id: 3c1ded918f (このIDを非表示/違反報告)
ミルクティ(プロフ) - こんばんは。一気に読ませて頂きました。今は亡き彼の墓前で「彼女を貰っていいですか？」って言うシーンには胸打たれました。チャンミンを良く理解しているギュのシーンも楽しかったです。最後は幸せな気持ちになりました。 (2017年6月8日 21時) (レス) id: 1eac5c6b24 (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - なつさん» なっちゃーーん！元気？こちらは元気よ。仕事忙しいっす。相変わらず新作も書くことなく。でも暇だから（笑）見直して修正しちゃう。待たせる時間もドＳだからね。ちょっとずつ。苦しくなる、超重い話が書きたい。最近私病んでるからねw (2017年3月17日 22時) (レス) id: b5966abb7b (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - hakuさん» わー！すごく嬉しいです。コメント苦手なのに送ってくださってすごく励みになりました。最近更新ないですが、また現れたらこっそり遊びにきてくださいね。こちらこそいつもありがとうございます！ (2017年3月17日 22時) (レス) id: b5966abb7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なお
| 作者ホームページ：https://twitter.com/630HiTVXQ
作成日時：2014年6月5日 13時
