誘惑 ページ4
A「ち！違います！！汗」
全力で否定する私には興味なさそうに。
その綺麗な横顔はどこか遠くの空に意識を飛ばしていた。
なにか、哀しいことでもあったんだろうか。
この人も。
哀しいというより、なんだか心が抜けてしまっているような空虚感。
A「ここには、よく来るんですか？」
私と似てる。
「うん。たまに。」
ぶっきらぼうだけど、さっきからちゃんと私の質問には答えてる。
「この夜景の一粒一粒の先には、人が居てさ。
そしたら、自分なんて大勢の中のちっぽけな存在に過ぎないって。
そう思わない？」
突然、哲学的なことを饒舌にしゃべり出した。
A「・・・そうですね。
分かるような気もします。」
分かるような分からないような。
でもやっぱりこの人。
なんかあったのかな。
「もう１本飲む？」
ビニール袋からごそごそと取り出して。
また私に手渡した。
うっとおしいくらい暑い風に吹かれながら、また彼がハミングし出した歌を聴いていた。
酔いが頭の感覚を奪っていく。
心地よい気分で、私は彼が聞いてもいない自分の素性をしゃべっていた。
A「・・・でね、私はそのデザインを描く仕事をしてるの。
明日、仕事休みで良かった！
飲み過ぎたな・・・
あなたは？
・・・なにしてる人なの？」
ふとした質問に、彼の缶ビールを持つ手は一瞬止まって。
「・・・大学生。」
そう答えた。
A「大学生なの！？
な〜んだ、てっきり大人っぽいから社会人かと・・
そうなんだ。笑」
私より年下なんだ、そう勝手に解釈して。
A「ヌナって呼んでいいよ〜♪
私で良かったら相談に乗るよ♪笑」
完全に酔った勢いで、その人との距離感を見誤った。
「・・・ヌナ。
俺は大学生だけど、子供じゃないから。
油断してるとどうなっても知らないよ？」
ボソッと呟いた声は、酔った私の耳には
誘惑には聞こえない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1099人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なお(プロフ) - 環琉さん» こちらこそ、読んで頂きありがとうございました！ (2018年9月25日 21時) (
レス) id: 460cbb2093 (このIDを非表示/違反報告)
環琉(プロフ) - なおさんこんにちは。いつも素敵なお話ありがとうございます。 (2018年9月16日 11時) (レス) id: 3c1ded918f (このIDを非表示/違反報告)
ミルクティ(プロフ) - こんばんは。一気に読ませて頂きました。今は亡き彼の墓前で「彼女を貰っていいですか？」って言うシーンには胸打たれました。チャンミンを良く理解しているギュのシーンも楽しかったです。最後は幸せな気持ちになりました。 (2017年6月8日 21時) (レス) id: 1eac5c6b24 (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - なつさん» なっちゃーーん！元気？こちらは元気よ。仕事忙しいっす。相変わらず新作も書くことなく。でも暇だから（笑）見直して修正しちゃう。待たせる時間もドＳだからね。ちょっとずつ。苦しくなる、超重い話が書きたい。最近私病んでるからねw (2017年3月17日 22時) (レス) id: b5966abb7b (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - hakuさん» わー！すごく嬉しいです。コメント苦手なのに送ってくださってすごく励みになりました。最近更新ないですが、また現れたらこっそり遊びにきてくださいね。こちらこそいつもありがとうございます！ (2017年3月17日 22時) (レス) id: b5966abb7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なお
| 作者ホームページ：https://twitter.com/630HiTVXQ
作成日時：2014年6月5日 13時
