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初めて嘘をついた。
仕事中で良かったと思う。
絶対目見て話してたら
バレてたと思う。
だけど自分で何とかしないと
いけないことだと思ってるから
巻き込めない。
樹くんに嘘をついてしまってからも
ケンちゃんには度々来てもらってて。
本当にバイト終わりにご飯食べに行ったり
私の家でタコパしたり鍋パしたりして。
北斗くんとは相変わらず
メールと電話の連絡しかしてなくて
心がキューっとするくらい寂しかった。
本当はすごく寂しい。
ケンちゃんを北斗くんって
呼び間違えちゃったほど寂しい。
「アンタ彼氏と名前間違えるって
彼にもアタシにも失礼ね」
なんて言われたっけ(笑)
寝る前にホーム画面の自撮りを
眺めて寂しさを誤魔化したり。
初めて北斗くんが出てる雑誌を
買って最新の彼を眺めたりして。
歌番組やラジオを聞いて
彼の声を近くに感じたり。
北斗くんのファンとって言われても
否定できないようなことばかりして。
寂しさからなのか
ストーカーの怖さなのか
日に日にクマが酷くなって
顔色が悪いってケンちゃんに
言われたっけ。
そろそろ病院に行かないと体力持たないな
なんて思っていたある夜。
例の変な人が段々距離を詰めてきていて
カフェの窓越しに私を見ていて目が合って
身の危険を感じて。
さすがに気持ち悪くて店長に相談すると
「なんでもっと早く言わなかったんだ！」
って久しぶりに怒られた。
それでもすごく心配してくれて警察に
相談してくれたところ見回り強化を
してくれることになったらしい。
少し安心しつつもやっぱりまだ怖くて
いつも通りケンちゃんと家に帰った。
エレベーターを降りて
近づくにつれて見えた人影。
私のアパートのドアの
横にもたれかかってる人。
遠くから見ても分かる
スタイルの良さで私が今
一番会いたかった人。
『北斗… くん』
名前を呼ばれて見上げた彼は
私が大好きな笑顔だったのに
隣にいるケンちゃんを見て
すぐに真顔になった。
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作者名：あいびー | 作成日時：2024年2月4日 12時
