Why Not？ (ページ16)

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ep. 16 ページ16

前の私だったら

『いや、だったらもう少し手の届く場所に
置いといてくれます？マジでなんなん』

とか言ってるはずなのに
その時は何故か

『ありがとう』

しか出てこなかったし。

大学のゼミでプレゼンしなきゃいけなくて
樹の家でご飯食べた後に練習してたら
人前で喋るコツみたいなの教えてくれたし。

そして何よりスキンシップの回数が多い。

この前も夕飯に呼び出されて
個室のお寿司屋さんに行った時。

「ねぇなんで俺がご飯食べようって
誘うとそんなに嫌な感じ出すの？(笑)」

『樹が私に興味持ってる理由が
分からないから。風磨もだけどさ
私、陽キャを引き寄せる力でも
持ってるわけ？』

「あははっ！かもな(笑)」

少しの沈黙が流れた時
向かい合って座ってるテーブルの
下では樹の足が私の足と触れてて。

私のコップを握ってる指に
触れてきたり撫でてきたりする。

そんな空気感に耐えられなくて

『大体他にいるでしょ、樹に
興味持ってて好きでいてくれる人』

なんて言ったりした。

「まぁいなくはないけど」

『うわ、否定しないの、だるっ』

「いなくはないけど、その子達は
Aじゃないし」

なんて言ってふふっと微笑んだ。

こんな時にアイドルパワー使ったり
してきて本当にずるいと思う。

『… 言い慣れてるよね、本当』

顔が赤いのを隠すように
お水を飲んだ。

とにかく隙があれば触れてくる。

そんな恐ろしい男が、田中樹。