237話 ページ44
(何で今頃、その記憶が……)
もう何十年と前の事だ。いや、何百年だったか。
どちらにせよ、かなり前の事である。
父が母に渡した赤色の火鼠の衣。
それを今、犬夜叉が着ている。
(何か思い出したら涙出てきた)
目許の涙を拭くと、更に溢れて来た。
それを根性で止め、殺生丸の方に駆けて行く。
今度は犬夜叉の制止が間に合わず、犬夜叉が盛大にこける。
「ありがとう殺生丸」
「いえ……」
「殺生丸が天生牙を持って、正解だったかもしれないな」
「……は？」
「きっと父さんは、殺生丸に成長してもらいたかったんだと思う」
「成長……ですか」
殺生丸の頭の上には『？』が浮かび上がり、殺生丸の顔は悩んでいる顔になった。
Aはクス、と笑い、寄っている眉間に指を押し当て、ぐりぐりと押した。
「ほらほら難しい顔しないしない。ま、そのうちわかるよ」
歯を見せてニカッと笑うAを見た殺生丸も、つられて少しだけ口許を綻ばせる。
「私、次に会う時までに笑顔の練習して来いよって言ったよな。前に1回会ってるけど」
「えぇ……」
「ちょっと笑えるようになっただけでも進歩かな。これからは笑顔の練習にも励むように」
「無理です」
「そこを何とか」
「……もう行っていいですか」
殺生丸も、姉にだけは勝てない様で、普段は余裕をもっている顔に、多少の焦りが見えた。
「うん。またね」
Aは元気に手を振って、殺生丸の背を見送った。
殺生丸が見えなくなったところで、後ろを振り返る。
「どしたの皆」
皆の目が点になっており、甘太と甘太の父親はもういなかった。
「前にも見たけど、本当に殺生丸ってAちゃんには勝てないんだね」
「あんな顔の殺生丸、初めて見たぞ」
「A様が、実はこの世で一番強い妖怪なのでは？」
「私も結構殺生丸とは会ってるけど、あんな顔したの初めて見たわ」
「俺も1回も見た事ねー」
「何皆好き勝手言ってんの」
皆の言葉に共通して入っているのは、『殺生丸のあんな顔は見たことがない』だった。
「まあ、殺生丸にもちゃんと感情があるってことで、いいんじゃないの？」
それより、甘太のお父さんは何か言ってた、と話題をそらし、もう何を聞いても答えてはくれなかった。
甘太の父が言ったことは、まさしくあの世とこの世の境の事。
恐らく、そこに最後の四魂の欠片があるのだろう。
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桜餅(プロフ) - にんじんさん» 会うと別れがつらくなる、ということであまり絡ませられませんでしたけど、如何でしたでしょうか？ (2017年8月14日 9時) (
レス) id: 4f9d801cbe (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 蛮骨うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ！！ (2017年8月14日 8時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜餅 | 作成日時：2017年8月8日 20時
