236話 ページ43
寝る間も惜しんで探し回ったが、甘太の父親は見つからなかった。
甘太はもう諦めかけていたが、Aの鼻腔に甘太と同じ匂いが届いた。
しかし、血の匂いのおまけ付きだった。
「くそっ！」
甘太と七宝を肩に乗せたAは、速度を上げた。
残された犬夜叉たちは、急いでその後を追いかけた。
甘太の父親は、草原に倒れていた。
体には矢が沢山刺さっており、誰がどう見ても手遅れだった。
「え、殺生丸！？」
殺生丸が甘太の父親の傍に立っていたことに、Aはひどく驚いた。
だがそれよりも、甘太の方が先。
甘太は風呂敷から首を取り出し、くっつけようとした。
「頼むッ。ひっついてくれー！」
が、時すでに遅し。
七宝と2人で頭を押してくっつけようとするが、くっつかない。
「わー！ おとうー！」
甘太は泣き出した。
Aは甘太を抱っこし、背を擦る。
殺生丸は何も言わず、踵を返して去っていこうとする。
「待って！」
声をかけたのはAではない。かごめだ。
「その腰に刺さった天生牙……。それって、死んだ人を助けるものなんでしょ？」
「やめろかごめ。そいつに慈悲の心なんてねえよ」
「そういう事だ」
殺生丸は再び歩き出す。
しかし、殺生丸は1歩歩いてすぐに止まった。
足元に七宝がいるのを見つけたからだ。
「た、助けてやってくれんかのう……」
七宝の声も体も震えていた。
いつもなら殺生丸にビビッて、かごめやAの後ろに隠れて震えているだけなのに、七宝は怖いのを我慢して殺生丸に訴えかけた。
「おとうが死んだら甘太は1人ぼっちじゃ！」
「私には関係ない」
(あ、やっぱり)
冷たい一言で切り捨てた殺生丸は、七宝の横を通り過ぎようとしたその時。
「ッ！」
天生牙が脈打った。
『救ってやれ』と。
(救えというのか……)
殺生丸は甘太の父親の元に戻り、天生牙を抜いた。
(見える……。あの世の使い共)
あの世の使いを斬ると、甘太の父親の頭の目が開いた。
「お、おとうー！」
「おっとっとっと。あぶねぇから」
Aはそっと甘太を地面に下ろした。
父親の元に駆けて行く甘太の姿が、何故か小さい頃の自分に見えた。
燃え盛る炎の中に駆けて行った父を見て、自分も追いかけて行こうとして、母に止められる。
母の腕の中に居る生まれたばかりの犬夜叉が、まだ見えないはずの目で自分を見た。
『行かないで』と言われた気がした。
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桜餅(プロフ) - にんじんさん» 会うと別れがつらくなる、ということであまり絡ませられませんでしたけど、如何でしたでしょうか？ (2017年8月14日 9時) (
レス) id: 4f9d801cbe (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 蛮骨うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ！！ (2017年8月14日 8時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜餅 | 作成日時：2017年8月8日 20時
