214話 ページ21
「そーおれ！」
「ぐはっ！」
Aの蹴りは蛮骨の腹に直撃した。
蛮骨の目から涙が流れる。
「お……、お……」
「お？」
「お前本ッッ当に変わってねえなあ！？」
「邪魔なんだよお前。背中痛ぇし！」
蛮骨がどいたので、Aも上半身を起こす。
蛮骨は近くの岩に背を預け、座った。
Aもその横に座る。
「腹痛い？」
「おかげさまで」
「悪い悪い」
「心がこもってねえんだよ」
「誠に申し訳ございませんでした。お腹は痛みますでしょうか。私の足が貴方様の……」
「もういい！」
蛮骨の声が、Aの声を遮った。
もう何度目かわからないが、『本当にお前は変わらないな！』と言いかけた時。
「あははっ」
Aが笑いだした。
「何笑ってるんだよ」
「いやー。10数年たってても、変わらないものってあるんだね」
「それはお前だろ」
「いやいや。蛮骨にだって変わってないものあるじゃん」
そういわれて思いつくものは、1つしかない。
蛮骨は少し頬を赤らめ、息をのんで深呼吸して、口を開けた。
「お前を想う、気持ちか」
「いや、声とか顔とかだけど？」
間髪入れずに言われたため、蛮骨の心は一気に乾いた。
「そーかよ」
目許に涙を溜め、蛮骨は三角座りをして顔をうずめた。
それを見たAはまた吹き出して、蛮骨にもたれかかる。
(まあ、死んだ後もずっと思い続けていてくれたっていうのは驚いたし、……嬉しかったな)
Aは嬉しくなって、微笑んだ。
「ありがとーな」
「俺、なんかしたか？」
顔を上げた蛮骨の瞳に映った、Aの笑顔。
「こんな私を愛してくれて」
驚いているのか、固まっている蛮骨をよそに、Aは三角座りをしていた足を伸ばし、その上に跨る。
首に手を回し、蛮骨の頭を包むように抱きしめる。
(こいつは生きてちゃいけない。でも……もう少しだけ許してほしい)
蛮骨の体の中に見えた、四つの欠片。
凶骨、霧骨、睡骨の分だろう。
これを全て取ってしまえば、蛮骨は死ぬ。
自分の腕の中で、死んでいく。
(できればそうしたいけど、無理だろうし……。きっと奈落は1番最後に残るであろう蛮骨を、利用するはず)
抱きしめる腕に力を込めた。
もう二度と失いたくない。
また目の前で失うのが怖い。
自分には、どうすることもできない。
そんな思いが、Aの頭を駆け巡っていく。
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桜餅(プロフ) - にんじんさん» 会うと別れがつらくなる、ということであまり絡ませられませんでしたけど、如何でしたでしょうか？ (2017年8月14日 9時) (
レス) id: 4f9d801cbe (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 蛮骨うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ！！ (2017年8月14日 8時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜餅 | 作成日時：2017年8月8日 20時
