213話 ページ20
暫くしてから蛮骨は離れた。
Aの表情が変わっていないのを見て、蛮骨は目をぱちくりさせた。
「何も感じなかったのか」
「何って？」
「俺と口吸ひ……」
「一日に何度もされりゃ、何も感じなくなるだろ……」
Aは乱暴に頭を掻いてそっぽを向いた。
そして、その言葉に衝撃を受けた蛮骨は、拳を握りしめた。
喉の奥から声を絞り出すようにして声を出し、Aに問いかける。
「何度も……されたのか」
「あ」
ついうっかり口が滑った。
ちらりと蛮骨を見やると、下を向いて震えていた。
(まずいな……。どうする？)
逃げ出せば捕まえられる。
宥めてもダメだ。
開き直るのは馬鹿のやることだ。
うんうん唸っているうち、Aはとても重要なことに気付いた。
(こいつ、蛮竜持ってないのかよ！)
話しかけられ、吃驚してとびかかった時も、蛮竜は持っておらず手ぶらだった。
手ぶらなら、勝ち目はある。
取っ組み合いになっても、勝てる自信はある。
(よしっ。じゃあ、開き直るか、逃げるか……)
一気に元気を取り戻したAだったが、その元気は残念ながらまた一気に消えて行った。
白霊山から離れているとはいえ、ここは白霊山の近く。
結界に守られており、辺りはとても清浄だ。
つまり、何が言いたいかというと、Aはまだ人間のままなのだ。
桜は使えない、爪も牙もない、腕力もない。
何度も言うが、今のAは17歳程度の只の女の子に過ぎない。
(蛮骨の享年は確か17……。うえーい。終わったな)
泣いても喚いても、もうAに勝ち目はない。
色々考えてみたけれど、やがてAはがっくりと肩を落とした。
「ねー蛮骨。いつまで拗ねて……」
蛮骨に手を伸ばした瞬間、両手を掴まれ、後頭部に鈍痛が走り、Aの目に映るのは空と蛮骨。
「後頭部めっちゃ痛い」
「呑気だな」
蛮骨の顔が真剣な顔から一気に呆れたような顔になった。
ごつごつした岩場のせいで、頭だけでなく背中も痛い。
Aの心の中は『押し倒されてね！？ キャー！』ではなく、『めっちゃ頭と背中痛いよ死にそう』だった。
態度も表情も変わらないAを見て、蛮骨はため息を吐いた。
「本当相変わらずだな」
「ありがとう」
「褒めてねえ！！」
蛮骨はまたため息を吐いた。
「ため息つくと幸せが逃げるんだよ」
「誰のせいだと思ってんだよ」
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桜餅(プロフ) - にんじんさん» 会うと別れがつらくなる、ということであまり絡ませられませんでしたけど、如何でしたでしょうか？ (2017年8月14日 9時) (
レス) id: 4f9d801cbe (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 蛮骨うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ！！ (2017年8月14日 8時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜餅 | 作成日時：2017年8月8日 20時
