212話 ページ19
煉骨を見送ったAは、その場に座り込んだ。
真っ赤になった顔を隠すためだ。
「何だよあれ……。煉骨あんな奴じゃないだろ……。ちょっと待ってよ……」
Aの頭の中は再び大混乱だった。
「何してんだA」
「うへぁ！？」
いきなり後ろから蛮骨の声が降って来た。
吃驚したAの口から、女人らしからぬ声が出た。
恥ずかしさで、涙が出てきた。
「な、何で泣いてんだよ！」
「うるっさい。脅かすな馬鹿！」
「うおっ！？」
Aは蛮骨に殴りかかった。
まあ、当然の如く避けられてしまうが。
それでも勢いを下げず、何度も殴りにかかる。
その度に避けられ、Aは大きな舌打ちをした。
更には手首を掴まれ、ぐい、と引き寄せられる。
それでもAの表情は変わらず、蛮骨に自ら顔を近付けて不機嫌そうな顔と声で囁いた。
「殴られろよ」
「何でだよ」
「うっせ。驚かせやがって。心臓止まるかと思った」
「蚤の心臓なのかよ」
「そろそろ黙れ」
蛮骨の心の中は、Aが近くにいるせいで乱れていた。
前は蛇骨たちがいたせいでやりたいことが何にもできなかったのだ。
それは生前も、久しぶりに会ったあの時も。
「そーいや、蛮骨は何でここにいるんだよ」
「暇になったから散歩してたらお前がいた」
「ふーん……」
「それよりお前、今の自分に置かれた状況分かってるのか？」
「え？」
手首を掴んでいた右手はそのまま、空いた左手でAの腰をさらう。
一気に距離が近くなり、Aの顔は一気に赤くなった。
「今ここには誰もいねぇ。俺たちの邪魔をする奴はいねーって訳だ」
「あー、心の準備をする時間をくだ……」
「そんなの必要ねえだろ？」
いつの間にか手首を掴んでいた右手は、Aの左頬をなでていた。
そのまま右手は下に降りて行き、顎を掬った。
(私蛮骨より少し身長高いんだけど、何でこいつの方が目線高いんだろ……。あ、ここ岩場だからか)
場違いで余計なことを考えていたせいで、少し反応が遅れた。
「ッ！」
蛮骨の顔が目の前にある。
唇に柔らかい感触。
(私……。どんだけ口吸ひされるんだろ……。気持ち悪くなってきた)
一体何度目の口吸ひだ。
Aは最早心臓の高鳴りも感じず、呆れたように目を閉じた。
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桜餅(プロフ) - にんじんさん» 会うと別れがつらくなる、ということであまり絡ませられませんでしたけど、如何でしたでしょうか？ (2017年8月14日 9時) (
レス) id: 4f9d801cbe (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 蛮骨うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ！！ (2017年8月14日 8時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜餅 | 作成日時：2017年8月8日 20時
