208話 ページ15
奈落からサッと離れたA。
もう体の自由はきくようになっていた。
奈落から視線を逸らさないように後ろへ1歩ずつ下がっていき、やがて奈落の表情が少し確認しづらいかなーという所で壁に当たった。
Aは振り向いて壁を叩く。
半妖時ならきっとすぐに登れるだろうが、人間時の今なら自 殺行為に最も限りなく近い。
だが、登らないわけにはいかない。
桜を腰から抜き、壁に突き刺して登ろうとする。
まあ当然ながら、無理だ。
もう何度目かわからないが、再び桜を壁に突き刺そうとしたその時。
「わっ！」
先程の様に、突然の浮遊感に襲われた。
後ろを見ると、奈落の触手がAを包んでいた。
先程いた場所まで運ぶと、奈落の触手はスルーっとAの体を離し始める。
「待って」
Aは触手を一つ掴み、躊躇いがちに口づけをした。
「こ、これはお礼だからな。勘違いすんなよ。私はお前の事、世界で一番嫌いなんだからなっ！？」
そういって、触手を離す。
触手は穴を降りて行き、やがて闇に飲まれ、消えた。
「はー！」
顔を押さえて蹲る。
(何してんだ。私ゃ……)
掌の隙間から見えた、白い足。
吃驚して顔を上げると、底には神無が立っていた。
もう神無がどこにいようが驚きはしないが、流石にこれは驚いた。
「どーした、神無」
神無は質問には答えず、踵を返して戻っていった。
だが、何度か振り返ってAを見た。
「ついてこい、か？」
神無は頷いて、また歩き出す。
Aも立ち上がって、ついていく。
(さっきの神無に見られてないよな、大丈夫だよな。聞かれてないよな！？)
先程とは違う意味でドキドキしながら、神無の後を追った。
｡:*+゜゜+*:.｡.*:+☆｡:*+゜゜+*:.｡.*:+☆
その頃、底に居る奈落は。
(Aが……わしの触手に、く、く、く……口づけ……！)
奈落は赤面しながら、何度もAに口づけされた触手に、口づけをしていた。
奈落は若干涙目だった。
乙女かこいつ。
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桜餅(プロフ) - にんじんさん» 会うと別れがつらくなる、ということであまり絡ませられませんでしたけど、如何でしたでしょうか？ (2017年8月14日 9時) (
レス) id: 4f9d801cbe (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 蛮骨うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ！！ (2017年8月14日 8時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜餅 | 作成日時：2017年8月8日 20時
