先 生 、好 き で す 。【俺スカ】

#好きな人 ページ44

.





放課後。1人で廊下を歩いているとまた声を掛けられた。

この前と違うのは、私を呼び止めたのが田中先生ってこと。先生は私と目が合うと髪をわしゃわしゃ掻いて口を開く。



｢え、っと、そのー...｣


｢...どうしたんですか？何かありました？｣


｢あ、いやー...あお、じゃなくて、Aってさ、明智のこと好きなのか？｣


｢...え、？｣



まさかの質問にびっくりして声を漏らす。私が明智くんのことが好き？何でそんなこと聞くんだろ。そう思い首を軽く傾げる。



｢その、最近仲良さそうだったから、そうなのかなぁって。ただの興味本位で聞いただけだから答えなくてもいいぞ、うん｣


｢好きって、恋愛的な意味ですよね？別に好きじゃないですよ｣


｢え、ほんとに？｣


｢ほんとです、昼休みにも言ったじゃないですか｣


｢...そっか｣



そう言って先生は何故かホッとしたような表情を浮かべる。...そういうの、期待しちゃうから辞めて欲しい。

私も仕返しに聞いてやろ、そう思い口を開いた。



｢先生は、好きな人とかいないんですか？｣


｢え、まぁ...いない、かな｣



へらりと気の抜けた笑顔を見せる先生。この反応は絶対いるやつだ。...失恋確定かな、なんて勝手にショックを受ける。いや、まだ決まったわけじゃない。うん、大丈夫。



｢へぇー、先生モテそうなのに｣


｢いや、全然モテないぞ。学生の頃もモテなかったし｣


｢嘘だ、告られたことはあるでしょ｣


｢まぁ、数えられる程度には...｣



その言葉を聞いて、羨ましいと思った。先生に告白できる立場にいた人がとにかく羨ましい。私じゃそれすらできないし。



｢...A？どした？ボーッとして｣


｢いや、何でもないです...帰りますね、さよなら先生｣


｢お、おぉ、また明日な｣



何だか悲しくなって、逃げるように先生に背中を向けて歩き出した。







.

#移行します→←#仲良い

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す